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【読書125】38億年 生物進化の旅

38億年 生物進化の旅」(池田清彦/新潮文庫)

 

義父さんからもらった。私が義母さんに本を借りて、二人できゃきゃきゃうふふしているのを見て、仲間に加わりたかったのではないか、というのが夫と私の共通見解。

 

前半は面白かったけど、後半、完新世に近づくにつれておそらく分かっていることが多くなるからだろうけど、分類に終始してしまっている印象。

生命の誕生から始まり、真核生物、多細胞生物の出現、環境変化に伴う大量絶滅と、そのあとに生じる生物分化の爆発。

筆者が構造生物学者であるため本書もその立場から述べられており、構造生物学的な進化の捉え方が、ダーウィンの進化論的な進化の捉え方とは全く異なるところに特徴がある。

 

内容的には少々難しい。

特に第一章は生命の始まりを論じるだけあって、DNA/RNAたんぱく質アミノ酸といった物質的な話、原始地球の環境と起こりうる化学反応、あるいは転写因子トランスポゾンの存在。

また、後半も分類の話が多くなるため、現代の生物、生物分類と古代の生物についてある程度の知識がないとイメージしにくいと思う。

 

本文で印象に残ったところから引用を交えてご紹介。(引用部は斜文字)

 

シアノバクテリアの出現後、真核生物が現れるまでには5億年~10億年ぐらいの時間がかかっている。(37ページ)

現在、人間は地球環境の最大の破壊者だなどと言われている(中略)。だが、地球の環境を改変した最初で最大のデストロイヤーは、シアノバクテリアであろう。(39ページ)

長きにわたってシアノバクテリアが反映し続けていた点、次のメインとなる出てくるまで5億年以上かかっていることからも、当時の生き物における酸素の猛毒性がうかがえる。

真核生物=好気性生物ではないだろうけど、本当に毒性廃棄物だったんだろうなぁ、酸素。

いくら大量にあったとはいえ、よくそんなものを利用するようになったよなぁ、生物。

 

狭義の「性」が「不死性」とトレードオフの関係になっている。(48ページ)

「性」を獲得して、交配により新個体が生まれる生物は、必ず死ぬ。生まれてくる個体は親個体とは別の個体だから。

細胞分裂で増える時は、同じ個体が複製されるわけで「不死性」を持っていると言えばそうなのかなぁ。

 

いま生存している多細胞生物のグループは、不定形の側生動物を除けば、放射相称動物にしても、左右相称動物にしても、みな、鏡映対称性をもっている。しかし、エディアカラ生物群のこれらの化石グループはそういう鏡映対称性をもっていない。(59ページ)

古代では様々な対称性をもつ生物がいた。

鏡映対称性の生物のみになっているのって、絶滅を越えて生き残るほど優位だったからなのか、それとも単なる偶然なのか。

まぁ、植物だと、点対称や軸対象がある気がするけど。

形を違えど、対称性というのは、一つの安定した形、あるいは作りやすい形なんだろうな。

 

サメは幾多の困難を全部乗り越えてきた動物だと言えるかもしれない。デボン紀に現れ、デボン紀末の絶滅もペルム紀末の絶滅も、三畳紀末の絶滅も、白亜紀末の絶滅もすべて乗り越え、さらに、いつの時代でもコンペティション(競争)の相手がそれなりにいたであろうにそれらにも負けなかったという希有な生き物である。(中略)古生代から基本的な姿形も変わらないサメは、環境の変化に適応できる能力を持った最強の動物かもしれない。(100ページ)

 

鮫の生物としての完成度、マジ半端ない。

wikiによればデボン紀って約4億1600万年前から約3億5920万年前。デボン紀末の絶滅では、海洋生物の8割、ペルム紀末の絶滅で9割超、三畳紀末の絶滅で7割、白亜紀末で7割。この絶滅率からだけ見ても、完新世で生き残っている確率はざっくり0.001%、大量絶滅の前後は大規模な環境の変化が伴うと想像されるので、実情はもっともっと低いよね。

 

どんだけ完成された生き物なんだ、サメ。

 

環境に適して徐々に形が変わっていくのではなく、むしろ、形が先に変わり、その形に合わせた環境を選ぶというのが、動物の基本的なスタイルなのである。(108ページ)

大きな進化に関しては、構造の変化が先で、機能的変化が後、ということなのだと思う。(114ページ)

システム上の変化としてはとにかくいっぺんに新しい構造が出来てしまう。構造が出来た後に、機能的洗練の中で必要なものだけをセレクトしていき、数を減らしていくような方向に進化していく。(117ページ)

 

この辺は、進化について、ネオダーウィニズムでは説明が付きにくい部分を埋めるための議論だと思う。

ネオダーウィニズムの立場では、大進化は基本的に、小さな変化とその取捨選択の積み重ね(=自然選択)により、結果的に大きな変化(大進化)が生じる。

そうではなく、突発的な大規模な構造変化があり、それに伴って生物は居住地(環境)を選び、その後、居住地に合うように微調整するのだ、ということだと思う。

 

ネオダーウィニズムでは、首の長いキリンと、短いキリンがいて、進化の途中には首の長さがその中間のキリンがいたことになるけど、中間の首の長さのキリンが発見されないミッシングリングが存在する。

キリンの首は急に長くなったので、中間の長さのキリンは存在しない、という立場なのである意味でミッシングリングを埋めることができる。

だけど、なぜそういった大規模な構造変化が起こるのか、また突然変異的に生じた大規模な構造変化がどのように定着するのかといった議論がなく、物足りない印象。

 

 

生物系の学部生くらいの知識があったら楽しく読めると思う。

逆に言うと、高校生物くらいの知識は無いと、小難しくて意味が分からない気がする。

2012年の出版で、最新かどうかわからないけど、情報は比較的新しい感じがした。

 

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