心ゆくまで崖っぷちで読む本

読む読む書く書く、時々考える(旧insolble)

【読書136】跡形なく沈む

跡形なく沈む」(D.M.ディヴァイン/創元推理文庫)

 

ミステリではなく、ヒューマンドラマとして評価できる一作。

 

タイトルは、最期まで読めばなるほどと思わなくもないが、伏線がないためやや無理やり感がある。

登場人物が多い点と、三人称小説ではあるが視点がルース→ジュディ&ケン→ハリー&アリスと急にずれる点で、読み手としては状況把握が少し大変だった。

 

小都市シルブリッジに現れた謎の美女ルース・ケラウェイ。

母の死後シルブリッジルースの区役所でタイプライターとして働きだしたルースは大きな憎悪を胸に抱いていた。

 

一人の死者と、一人の行方不明者。

過去の不正選挙疑惑に隠し子、それぞれの政治的な思惑。

 

小さな都市に投げ込まれたルースという小石に、波紋が広がるように疑念が波及していく。

複雑な人間関係の中で疑念が重なり合っていく様子は見事だ。

ジュディ(とケン)が主人公ととらえれば、ルースは非常にジョーカー的な立ち位置で、ジョーカーとしての役割をきっちり果たしている。

 

露骨なまでに触れられない一人の人物。

ミステリの犯人としては分かりやすすぎるが、ジュディを主人公として、ジュディとの関係性に着目して考えると、こうゆうのもありな感じがする。

ミステリとしては明らかに減点だろうが、サスペンス要素のある人間劇としてみると、なるほど、と思う。

 

実はミステリを読むのは久々だったのだけど、結構楽しめた。