心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書148】ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待

ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待」(佐藤克文/光文社新書)

 

データロガーを使用した、海洋生物の生態研究に関する新書。タイトルにクジラが入っているけどクジラの話題はまったく出てこない。

データロガーや記録装置が発展して小型化してきたことによる新しい分野の研究と考えると、2007年発行の本書は、やや古いのかな。

なんとなく文系な本が続いたので、久々に理系ぽい読書。

 

ウミガメ、ペンギン、アザラシとデータロガーを取り付けた動物たちの羽ばたきや体温、加速度のデータから、彼らの海中での動態を分析したもの。

 

何かを発見するというのは、実に楽しいものである。(6ページ)

「はじめに」のこの言葉通り、本書は、発見する楽しさ、ときめきに満ちている。

 

記憶に残ったことを書いておく。

 

●キングペンギンとコウテイペンギンは非常によく似ているけど別の種類。

コウテイペンギンの雛はぬいぐるみかと見紛うほど、めちゃめちゃ可愛い。

●キングペンギンの雛は茶色で、大人になる途中の羽が抜け替わる時期はまだらなユニークな感じ。

改めて写真を見比べてみたけど、キングのほうが頭の「’」が黄色くて可愛い。

ウィキペディアコウテイペンギンの項をみると、日本でコウテイペンギンを観ることができるのは、名古屋港水族館(愛知県)と、アドベンチャーワールド(和歌山県)だけらしい。

名古屋港は近いので時々行くのだが、アドベンチャーワールド、ぜひ一度行ってみたい。パンダもいてなかなか楽しい。

 

●アザラシとペンギンの紡錘形の体は収斂の結果と言えるかもしれない

 ※収斂(しゅうれん):同一の環境下で進化していった異なる種の生物において、身体的特徴が似てくる現象。

●ペンギンは潜水前に大きく息を吸い、深海へと潜水していく時にはばたく(エネルギーを使う)

●一方アザラシは、潜水前に出来るだけ息を吐き重力で沈んでいく。エネルギーは海面に戻るために使う。

●どちらの場合も、中性浮力を利用して、できるだけ長期間、餌の多い水深にとどまる。

鳥類として一度獲得している機能を再利用するとなると、ペンギンスタイル、そうじゃないとアザラシスタイルになるのかなぁ。鳥類でありそもそも他の海生動物、クジラやジュゴンなんかはどうなんだろうか?魚類は?爬虫類は?

 

●教科書では変温動物と教えられる爬虫類のカメだが、ウミガメでは代謝に内温性を維持している可能性がある

●逆に恒温動物である鳥類のペンギンは、深く長く潜水するために変温する

哺乳類や魚類といった大分類による、恒温動物/変温動物の分類にはに無理があるのではないかという話は時々聞く。

哺乳類であるカモノハシは変温動物だしホオジロザメは恒温動物だと言われていた気がする。

 

●恒温性の維持には莫大なエネルギーが必要である

素人的に考えると、既に恒温性を獲得してしまっている以上、ペンギンの生体内での様々な反応は恒温条件で初めて円滑に行われるようになっていそうな気がする。

そこから変温しても大丈夫なようにさらに進化しているってことなのだろうか。

 

この他、実際の研究の現場で研究者の側で、習慣の差に戸惑う様子や、感じた文化の差がコラムとして述べられている。

 

口絵でペンギンやアザラシのカラー写真が大量に紹介されているのはもちろん、本文中にもさまざまな彼らの写真が掲載されていて幸せ。

 

試行錯誤を繰り返し、博物学的に得られたデータから考えられることを考察していく様子、研究の過程を垣間見るようで楽しい。

ペンギンが飛び出す穴の周辺にある氷の壁の高さを人力で変えて、飛び出してくるペンギンをさらに観察するくだりなどは、読んでいて「なにやってんの!w」と笑いたくなる。

遊び心に研究者としての手法や道具をプラスして発見や新たな発想が生まれるのかもしれない。

 

こういった部分は、以前書評した「鉄を生みだした帝国―ヒッタイト発掘」と類似の面白さだと思う。

 

ウミガメにロガーを取り付ける試験の協力者として、南知多ビーチランドが紹介されている。

先日行ってきたんだけど、ここ、すごく良い水族館だと思う。【南知多ビーチランド感想

こういった人との距離の近い、動物に負荷をかけると言われがちな実験に対して協力的な施設なんだろう。