【読書170】死ねばいいのに
「文庫版 死ねばいいのに」(京極夏彦/講談社文庫/同僚より借受)
死んでしまった女アサミの事を、関係者に尋ね歩く無礼な若者ケンヤ。
ケンヤと関係者との対話形式で話が進む。
ジャンルとしてはサスペンスなのかなぁ。
「オレ、バカなんでほんとわかんないんっすけどー」と定型文のように繰り返すケンヤが非常に説教くさい。
各話が同じお話の焼き直しのようで単調。最期まで読むのはやや苦痛に近い。結末もまぁ読めてしまう。
京極作品としても、ただの小説としても、正直残念な出来栄えだった。
ただ、人間観察的な面白さはあって、生前のアサミを取り囲んでいた人間たちは、皆、己の事しか考えていない、自己中心的な人物として描かれている。
ケンヤの「アサミの話しを聞きたい」という問いかけに、自分語りだけで返すような人間たちばかりだ。
結果、生前のアサミはケンヤの目を通してしか語られない。
人間関係は双方向だ。一方方向ではありえない。
ケンヤは「アサミは幸せであった」と主張するが、友達もおらず、自己中心的な人間に囲まれ、幸せであり続けられるのはやはり一般的な精神状態ではないのではないかと思う。
正常な人間関係を気付けていないのはお互いなのだ。
生前のアサミはどんな人間だったのだろう。
想像し始めると何となく重苦しい気分になる。
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最近さくさく本を読んでる。
良い傾向、良い傾向。