心ゆくまで崖っぷちで読む本

中小企業診断士(登録予定)の読書ブログ

【読書219】薬は体に何をするか

薬は体に何をするか」(矢沢サイエンスオフィス)

 

タイトルの通り、いくつかの病気とその治療薬、対処薬の作用機作について記されている。

2006年発行で日進月歩な医学の分野ではすでにやや古めになってしまうのかもしれないが、雑学としては十分であろう。

久しぶりの再読となったが、祖父母が年をとり様々な病気が身近になってしまった分、内容が理解しやすかったのが皮肉といえば皮肉である。

 

◼︎アルツハイマー病治療薬

アルツハイマーと診断された親族が3人おり、身内に多い病である。長寿家系だと言えるかもしれない。

進捗も発症時期も様々であるが、一番最初に発症した母方祖母が、一番進捗が遅いように感じる。

 

昼夜の別がなくなり、夜中に起き出して朝の支度を始める、妻を母親と間違えるなどということにもなります。(27ページ)

実際に父方の祖父この症状が起こっている。寝て起きた瞬間が朝、という認識のようだ。徘徊はないもの排泄障害もあり、一番重度であろう。

発症前はシャキッとした人であっただけに、脳の不思議を感じる。

薬の管理、住環境によって進捗は相当異なるようである。

 

◼︎ステロイド

その名前を聞くだけでアレルギー反応を起こす人も多いホルモン剤、ステロイド

「寝たきりのリウマチ患者にステロイドを飲ませると立ち上がって歩き出す――墓場に向かって」44ページ)

そんな格言すらあるらしい。

効果の劇的さと副作用、投薬中止時のリバウンドの激しさが、嫌われる理由だろうか。

ステロイド剤は、抗生物質や抗ウイルス剤のように病原体を殺す薬ではなく、また頭痛薬や抗うつ剤のように病気の原因に直接はたらきかける薬でもありません。前述のようにこの薬はホルモンであり、私たちの体にもともと備わるしくみを利用して病気の症状を抑える対症療法薬です。(45ページ)

 

ステロイドは、人体の設計図であるDNAに直接作用すると考えられています。(49ページ)

この話をもうすこし、詳しく知りたいのだが、本書にはこれ以上の記載がなかった。

よい参考書があればどなたかご紹介いただきたい。

 

◼︎頭痛薬

最近は頭痛外来なんてものもできて、たかが頭痛、されど頭痛といった感がある。

頭が痛いと言うが、脳には痛覚がないともいう。

しかし脳が痛みを感じないなら、なぜ無数の人々が頭痛に苦しむのでしょうか。一方で、痛みについての最新理論は、「痛みは脳の中にのみ存在する」と述べているのですから。(59ページ)

ここを聞くだけでややこしくて頭痛がしてきそうだ。

実際は脳周辺の毛細血管によって痛むらしい。

 

◼︎糖尿病

夫方が糖尿病家系。大学の同期にもⅠ型糖尿病の子がいた。

日本人を含めたモンゴロイド(東アジア系人種)よりⅡ型糖尿病になりやすいとされています。それは一般に①インスリン分泌能力が欧米の自人より低く、②飢餓に強い遺伝的要因をもつためと考えられています。(96ページ)

ということは、彼らは、私より飢餓状態に強いのだろう。

 

紀元1世紀のトルコのカッパドキアの医師アレタエウスの記述はもっと具体的です。糖尿病の英語名ダイアビーティーズの語源である″ディアベテス″の命名者でもある彼はこう記しています。「ディアベテスは恐ろしい病気で肉や手足が尿に溶け出てしまう。患者が水をつくるのは止められず、その流れは水道の回のようだ。余命は短く苦痛に満ちる。」(100ページ)

古くから症状が知られながらも、

ちなみに糖尿病かどうかの確認は近世まで「尿を舐めて甘いか」だったのも面白い。

 

◼︎インフルエンザ

1918年11月、どこからかこの村にまで到達したスペインかぜウイルスは、もともとインフルエンザに抵抗力のなかった村人をほとんど全滅させ、72人の住民の遺体は村はずれの共同墓地に埋葬されました。

しかし、この場所が北極圏で、遺体の埋葬された場所が永久凍土の中であったことが、後世の研究者たちに大きな幸運となりました。

1997年8月、ここから発掘された若い女性の遺体の肺組織から、完全なウイルスが検出されたのです。(146ページ)

インフルエンザどうこうよりも、7ウィルス分離に成功したことに驚く。

そこから再度、スペイン風邪の流行とはならないのだろうか?

 

◼︎坑ヒスタミン剤

遺伝的変異は、生まれつきの場合も、また後天的に生じる場合も考えられます。(164ページ)

ここももう少し詳しく知りたいところ。

食物アレルギーなんかは急に発生するようになったりするが、後天的な遺伝的変異が生じた結果である場合があるということか?

逆に花粉症も治る可能性はあるということか。治れ、花粉症。

 

◼︎ピル

日本はピルに関しては後進国であるようだ。

それでも最近は、生理痛やPMS改善を目的として服用している(服用経験のある)女性は案外多いように感じる。

日本でこれほど中絶が多いひとつの原因は、経口避妊薬すなわちピルの普及が、諸外国に比べて著しく遅れていることです。(206ページ)

同書ではピルの普及が進まない理由として、他の避妊具メーカーのネガティブキャンペーン厚労省の文書をあげているが、どちらかというと文化的背景が効いている気がした。

ピルは欧米では1960年代から広く普及しており、アメリカでは、中絶を許されないカトリツク教徒の女性の“パーセントが使用しているとされています(207ページ )

カトリックでは中絶が許されない以上、子供を望まないのであれば、妊娠をしないしか方法がない。

中絶が許されないために生むだけ産んで、育てない文化であった欧米と、間引きを行って残った子を大事に育てる日本では、中絶に対する捉え方が大きく異なるのではないだろうか。

 

◼︎アヘン

紀元前3000~4000年、現在の中東で最古の文明を形成したシュメール人はすでにアヘンを知っていました。彼らの残した粘土板には、ケシを栽培し、早朝にケシ坊主の白い果汁(=アヘン)を採取して″喜びをもたらすもの″として用いたと記録されています。

古代のエジプトやギリシアでも痛みを抑えたり眠りを誘う薬として重宝されました。(222ページ)

意外なところでシュメールの名を見た。

それくらいアヘン(モルヒネ)の歴史は古い。

多福感をもたらしアヘン戦争の原因にもなったアヘンだが、現代ではドラッグとしてではなく、末期ガン患者への鎮静薬として医療に使用されている珍しい例となっている。

アヘンとは異なるが睡眠障害を患う友人が、覚せい剤を処方されている。

 

ほとんどの薬は使い方によっては毒にもなる。

効果ばかり、あるいは毒性ばかりに目を向けず、うまく付き合って行きたいものである。

 

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