心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書269】福袋

福袋」(角田光代/河出書房新社/ひたちなか市立図書館所蔵)

 

開けてみるまで、中に入っているのが福なのか鬱なのかわからない。人は福袋のようなものを持って生まれてくるのかもしれない。本書は8編の短編集である。

 

預けられた箱、家の前に放置された紙袋、台所に隠された小箱…。その中に詰まっているのはただの物でしかないけれど、受け手によって、物が幸せの象徴にも不幸の象徴にも変わる。または、人や家庭、関係性を箱に見立てて、溢れ出す未来や過去、そして現在。

 

幸も不幸も断定せず、日常に潜む「ありそうな」出来事なのに、言いようのない乾いた感じがする。

覆水盆に返らず。起きてしまったことは元には戻せない。そんな話が多い。

 

福袋の中身は買う前に決まっている。人が持って生まれてくるものも、基本的には両親のもつそれぞれの形質を割って足したものでしかない。

買ってしまった後、生まれてしまった後に、福袋の中身を変えることはできない。だけど、中身を楽しめるか、使えるかは案外自分の匙加減なんじゃないだろうか。