心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書296】三島由紀夫―剣と寒紅

三島由紀夫―剣と寒紅」(福島次郎/文芸春秋)

 

若くして名を馳せ、文壇、芸能にと活躍し、最後は割腹自殺という壮絶な死を遂げた文士、三島由紀夫

その同性の情婦であった福島次郎視点での三島由紀夫を描いた作品が本作である。

 

「三島文学を理解する上での貴重な資料」との賞賛と「単なる暴露本」との批判を受ける作品だ。

暴露本であるならば、内容は事実に基づく、と思われるのだが、個人的にはとりあえず、三島由紀夫との書簡をもとにした半フィクション小説として、捉えることにした。

 

演出家であり、役者。耽美主義者。坊ちゃん然とした素直さとカリスマ的な迫力。

三島由紀夫作品を読んで感じる三島由紀夫像と、本作に描かれる三島由紀夫像は奇妙に一致する。

しかし私は思うのだ。

私がいくつかの作品読んで感じた作者像と、実際に情婦であった人間が描く三島由紀夫像が、一致するわけがないではないか。

 

また、結びに近づくにつれて、三島由紀夫自死に思いをはせるにつれて、被害妄想感や自意識過剰感が増す。

三島由紀夫は衝撃的な死に方をした。

関わった人間の多くに心理的外傷、三島由紀夫の死の原因は、実は自分だったのではないかという罪悪感、を植え付けるに充分であったのだろう。

 

どれほど読み進めても、筆者にとっての三島由紀夫は、愛しい恋人ではない。

性的なものを除いても、福島の三島由紀夫という人に対する態度は、驚くほど淡白である。

あくまで三島由紀夫は、『仮面の告白』という作品を書いた作家先生であり、地位や権力の象徴なのだ。

三島由紀夫の側に立つと、そのことが滑稽でもあり寂しい。

三島側の書簡しか記載されていないが、彼はどのような気持ちで書のやり取りを重ねたのだろうか。

 

以前の書評で三島作品を「コスチュームジュエリーのようだ」と評したが、本作における三島由紀夫像もまた、煌びやかな硝子玉のような輝きをはなっている。