心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書306】すごい毒へんな毒

へんな毒すごい毒」(田中真知/技術評論社)

 

生物毒、人工毒、麻薬に薬…。人体に影響を与える化学物質は既知ものだけでも星の数ほどあり、未知ものものまで含めればその数は計り知れない。

本書では「毒」をテーマに、その詳細を2-3ページで紹介する理系雑学本である。

 

そもそも毒とはなんだろうか。

だが、科学的にみると、毒と薬の間に明確なちがいはない。毒も薬もともに生物活性に影響を与える作用があり、本質的にまったく同じものである。一部の毒が薬になるわけでもなく、両者は一体のものと考えてよい。その同じ化学物質が毒になったり、薬になったりするのは、ひとえにその量のちがいによるものである。(8ページ)

これは非常によく言われることである。と、同時に、うっかりすると忘れがちなことでもある。

毒はあくまで毒で、薬はあくまでクスリ。そう考える方がシンプルで、人は正誤よりもシンプルで分かりやすいロジックを記憶しがちなのだ。

 

人類と毒、化学物質との関係は古い。コカやタバコを宗教的儀式に使用していたというのはもちろんだが、中世アラビアではアヘンの副作用を赤痢の治療に応用していたという。

 

一番興味深いのは化学物質同士の相互作用の話だろうか。

実は風邪薬として一般に普及しているアセトアミノフェンですら、用法によっては死に至る。

アルコールと一緒に風邪薬の成分であるアセトアミノフェンを大量に摂取すると肝障害を起こして死亡する危険がある(235ページ)

そして、実際にアセトアミノフェンとアルコールの同時摂取を利用した保険金殺人すら起きているのだ。

 

本書ではもう一つ、フグ毒であるテトロドトキシンと、トリカブトの毒であるアコニチンの拮抗作用が紹介されている。

テトロドトキシンは、アコニチンとは逆に神経細胞のナトリウムチャンネルを遮断する作用がある。このため、アコニチンとテトロドトキシンが一緒に投与されると、テトロドトキシンはナトリウムチャンネルを開放しようとするアコニチンの働きを邪魔する。この現象によって、アコニチンが神経に作用する時間が遅れたのではないかと考えられた。(229ページ)

毒にしても薬にしても化学物質であるから、相互に作用し合う場合は多い。

毒となるか薬となるかは先にも述べたとおり、その使用量と目的による人間側の分類にすぎない。

 

処方薬でも市販薬でもよく言われる「用法用量を守って」が、いかに大切なことか、改めて意識したい。