心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書313】黄泉坂の娘たち

黄泉坂の娘たち」(仁木英之/角川書店/ひたちなか市立図書館書蔵)

 

現世と狭間にある黄泉坂。

現世への執着心から坂を越えられず、変調をきたした魂はやがてマヨイダマとなってしまう。

そこで無念の魂が現世の障りとならぬように、無念を断ち切り黄泉坂を超える手伝いをする者たちがあった。

 

黄泉坂シリーズ2作目。

黄泉坂案内人の仕事の紹介の裏で黄泉坂の存続問題に揺れていた前作とは異なり、本作の黄泉坂は最初から大きな問題に直面している。

天災や災害では通常では考えられないほどの死者が出た時、どうするかということだ。

津波の描写から始まる本作が東日本大震災を受けて書かれたのは疑いようがない。

日本という国に限っても何度か異常な数の死者、というのはあった。

その度に黄泉坂は延びて、越えるのが難しくなっているという。

 

そしてもう一つ。

黄泉坂において、妖でもマヨイダマでも神でもない、中途半端な存在になってしまった速人と彩音が今後、どう生きるかということだ。

 

それぞれの話を人情話として楽しめた前作と異なり、この二つのテーマが大きいが故に、それぞれの話を単品として楽しむことが難しい。

彩音のカウンターパートであるはずのやよいの影が薄くなってしまっているのが残念だ。やよいのペアとなった先代さまだけいれば、やよいがいなくても良い気すらするレベルである。

 

わがままを言うならば、先に述べた二つの主題を、それぞれ一冊、いや、天災の話にいたっては二冊分くらいのボリュームで読みたかったなぁ。