心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書315】羆撃ち

羆撃ち

(久保俊治/小学館/ひたちなか市立図書館書蔵)

 

猟師の登場する話、猟師を描いた話を読んだことはあるが、猟師自身が一人称で書いた文章は初めてである。

兼業ではなく専業、しかも羆を専門とする日本で唯一のハンター。

不思議なプロファイルである。短大を卒業後、20代で日本で唯一の羆ハンターとなり、その後渡米。ハンティングガイドを育成するスクールに学び、一度はアメリカでハンターとして就業したものの、ビザの関係で帰国し、その後は牧場を営む傍らの猟に従事する。

本書には描かれていないが、後に結婚し二女を設ける。

 

主観に寄れば、時間の流れは一定ではない。

集中力が高まるあまりに、数秒をとても長く感じることもあれば、あっという間に過ぎ去ることもある。

 

動と静。

それをこんなにも感じる文章があろうとは。

 

耳が痛くなるほどの静寂と、早鐘を打つような鼓動。銃声。そして、時の流れが戻ってくる感覚。

それら、経験者しか感じ得ないはずの情動を、文字を追うごとに、我が身のことのように感じさせる文章。見事としか言いようがない。

 

本書の内容とは無関係に非常に印象に残ったシーンがある。

追跡の末に羆を視界にとらえたものの、射程外という距離で、音を立てずに近づくために気温が上がるのを待つ場面である。

注視すると羆もなんとなくこちらを見るので、慌てて目をそらす。背中を木にもたせかけ、できるだけ楽な姿勢で見るともなく半目にしていると、羆もこちらを向かない。目を見開くよりも半目にしておくほうが、相手の動きなどもよく見える。(60ページ)

 

 

この「半目にする」というくだり、実は以前に読んだ「壊れた脳 生存する知」に全く同じことが書かれていたのだ。

方や、羆を追うハンター、方やモヤモヤ病から脳溢血、高次脳障害を患った医師。

全く異なるプロフィールなのに、同じ手法にたどり着く。

半目にし、視界からの情報を制限するというのは、ある種の見方をする上ではとても大切なのかもしれない。

 

 

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