心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書323】世にも奇妙なマラソン大会

  

世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)
 表題作、深夜の勢いだけでサハラ砂漠でマラソンを走る羽目になった話、ブルガリアで元イケメンオヤジにナンパされる話、そして小噺集の三章構成になっている。
 

 

深夜というのは、人間がろくでもないことに燃え上がる危険な時間である。(14ページ)

 

冒頭からそう書いてあるとはいえ、深夜のラブレターや自作小説と、サハラ砂漠でマラソンを同列に語っていいものなのか、判断に迷う。

ともかく、深夜の勢いで申し込んでしまったのが運の尽き。大会までは3週間というギリギリスケジュールながら撮影隊まで引き連れて、フルマラソン完走目指して向かった先は西サハラ

腰痛改善を目的としてはじめたジョギングで、走った最長は15kmという貧弱なマラソン経験しかないのに、フルマラソン42.195km、しかも路面は砂漠である。

 血迷ったとしかいえない思いつきが、どうして実現できてしまうのだろうか?不思議である。

 

さてさて、実際のマラソンに目を向けると、集った人々のバックグラウンド、国民性、国際色豊かといえば聞こえはいいが、各国民が各国の思惑を代弁しているようにも見えて面白い。

 

第二章、「ブルガリアの岩と薔薇」
帰国のために経由した飛行機で知り合った薔薇かおるオヤジ。
ジュテームと愛の言葉をささやかれながら、攻防戦。

元イケメンぷり。娘の美人ぶり。

優しく迫られる女性の気分を味わいながら、
当時筆者は44歳。妻ある男性である。
一晩中攻防戦は続く。

 

三章目にあたる「謎のペルシア商人 アジアアフリカ奇譚集」では、バックパッカーの間で語り継がれる七不思議のような小噺が7つ。

最終話を飾る「二十年後」で、

20年後もこんなことしていられたらいいなぁ(259ページ)

その会話がなされたのが、大学入学から丁度20年だったとあるが、「幻獣ムベンベを追え」に続く2冊目として読んだのが本作だったのはなかなか面白い符合だ。

20年(ほど)前に書かれた本と、20年後である2010年に書かれた本。書物を通して時間旅行をした気分である。

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 高橋秀行さんの一冊目はこちら。

insolble.hatenablog.jp

kocho-3.hatenablog.com