心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書326】少女地獄

 

少女地獄

少女地獄

 

 
ある開業医の書簡、という体裁で、一人の少女看護婦の言及する。
開業の前日、偶然雇い入れたのは19歳の看護婦、姫草ユリ子。
青森の裕福な造酒屋の娘という触れ込みで新規に開業した臼杵耳鼻科に雇われた彼女は、看護婦としての天才的な手腕と外交手腕をもって、マネキン兼マスコットとして、患者や院長家族の信頼を得てゆく。

だがその一方で、彼女にはとてつもない悪癖があった。
虚言、妄想、彼女は「モノスゴイ嘘吐きの天才」でもあったのだ。

虚構の彼女に欺かれた人々は、まずは彼女の朗らかさに心酔してゆく、だがしかし、無関係の他者までも巻き込んで巨大化してゆく虚構はほころび、彼女を取り巻く人間たちの間に違和感が蔓延してゆく。
虚言を維持するために、人を使い、労力を使い、金銭を使い、己の死をもってまでその虚構を維持しようとする執念。
彼女の雇い主であった臼杵医師視点での書簡は、「詐欺にあったのだ」という憤怒が、語るにつれて、同情の色味をおびてゆく。

事実が白日の下にさらされたとき、彼女を取り巻く人々は、まさに狐につままれたような気分を味わうのだろう。
虚構癖の果てに自死せざるを得なかった彼女は、人をだます側にあったはずなのに、なぜか可憐な印象だけが際立っていた。