【読書017】仏果を得ず
仕事でもある芸術と恋愛と人間関係と。
「時に思い悩みながらも、夢に邁進する主人公」が描かれている点から、ジャンルは青春小説だと思う。
舞台設定が文楽(人形浄瑠璃)、しかも義太夫(歌い手)というマイナーなところにあるため、最初は状況がつかみにくい。
だが、読み進めているうちになんとなく分かるようになってくる。
背景などはきちんと書かれているから、知らない人にも親切な感じ。
しかし解説的ではないので、小説としての質は損ねない。
無駄に詰め込まれた恋愛要素が、作品自体の評価を下げる例も多いけど、本作では主人公の悩みの一要素として、きっちり活きてくる。
文楽を知っていても知らなくても楽しく読める。
それどころか、読者に、文楽自体にも興味をいだかせることに成功している。
三浦さんの作品は初読ですが、本作を読む限りでは娯楽小説的な文章が上手な方だなぁ、という印象でした。
機会があったら何冊か読んでみても良いかもしれない。