【読書348】サースキの笛がきこえる
多読の方は長いものを読んでいてまだ少し時間がかかりそうなので、以前借りた図書館本を。
これ、すごい良かった。
主人公のサースキは人間と妖精のハーフ。妖精の国で妖精として育つが、魔法が使えず落ちこぼれて、人間の世界に追放されてしまう。
人間の世界で、妖精だったことを忘れて赤子から再度やり直すサースキだが、育つにつれ鉄が苦手だったり、ルーン文字が見えたり、半分妖精であるが故の特性から、人々の生活のなかで浮いてしまう。
祖母、父母、村の人々…。人間たちとの軋轢の中でサースキが魅入られたのは、荒野でバグパイプを奏でることだった。
いわゆる自分探し系なんだろうけど、生まれ持った特質をどうしようもできない中で、自分として生きること、そのための決断と捨てなければならなかったもの。
切ないのはサースキが妖精の世界も人間の世界も、彼女なりに愛していたことだ。彼女なりに同化しようと思っていたことだ。しかし、どちらの世界も、世界の標準からは外れる彼女を受け入れない。
最終的にサースキはどちらの世界も捨て旅立ったけど、その先に彼女が彼女として立てる世界があることを願う。