【読書371】極北に駆ける
これも一度は挫折した本。初っ端に嫌にならなければある程度は頑張って読むのだけど、どうやら5-7割くらいのところで挫折する傾向にある。

- 作者:植村 直己
- 発売日: 2011/02/10
- メディア: 文庫
解説の大島育雄は次のように書いている。
自分はこういったことをしてきた、できる、という強いアピールがないと、次の冒険への扉を開くことができません。
人の好き嫌いにはとりあえず目をつぶって読み切った後に、目にしたこの解説が一番の理解の助けだったかもしれない。
内容は南極横断という大きな目的へのステップとして、エスキモー達の北極圏を独り、犬橇で走破した冒険記である。 うーん。自分でもびっくりするほどハイライトしていない。 唯一がキビアに関する下記である。
ターツガの指さすほうを見ると、なるほど腹をぬいあわせたアザラシが一頭ころがっている。皮下脂肪だけを残したアザラシのなかには、黒い羽毛がついたままのアパリアスという小鳥が四百羽ほどつめこまれているのだ。奥さんはかたく凍ったアザラシの腹を裂き、アパリアスをとり出してわたしてくれた。凍ったアパリアスがだんだんにとけていくにしたがって、ブルーチーズのような強烈な臭いが部屋中にひろがってゆく。糞の臭いに似ていないこともない。私はゴクリとのどをならした。これがじつにうまいのである。私はアパリアスを両手でつつみ、冷たいのをガマンして臓物がとけてくるのを待つ。手でおさえてやわらかくなったところで、アパリアスの肛門に口をあて、手でしぼり出すようにして中身を吸うのだ。ちょうど冷たいヨーグルトのような味の赤黒い汁が口のなかいっぱいにひろがり、なんともいえないうまさだ。中身が終わると羽毛をむしり、皮や黒く変色している臓物、肉と食べてゆき、最後に頭を歯でくだいて脳ミソを吸う。口のまわりは黒い血でベトベトである。アザラシの皮下脂肪の浸透したアパリアスほど臭いが強く、うまい。私が日本に帰って一番食べたいと思ったのは、鯨の皮でもアザラシの肝臓でもない、このキビアであった。今でも月に一度くらいはこのキビアの夢を見る。
長々とした引用になったが、キビアは食べるのに勇気がいる食べ物のトップランクだ。味を含めて詳細に書かれているのはそこそこ珍しい。
植村が旅してから40年。地球温暖化や文明化の影響をうけ、彼が旅した極地はもうない。
北極探検だったらこれが一番好き。 insolble.hatenablog.jp