【読書410】動物農場

- 作者:ジョージ・オーウェル,高畠 文夫
- 発売日: 2015/01/30
- メディア: Kindle版
表題作の「動物農場」のほか3編が収録された短編集。
動物農場
表題作。
Wikipediaのあらすじから引用する。
とある農園の動物たちが劣悪な農場主を追い出して理想的な共和国を築こうとするが、指導者の豚が独裁者と化し、恐怖政治へ変貌していく過程を描く。スペイン内戦に自ら参加した体験を持つオーウェルが、人間を豚や馬などの動物に見立てることで20世紀前半に台頭した全体主義やスターリン主義への痛烈な批判を寓話的に描いた物語である。
農園の動物たちが革命を起こし、独裁者が現れ、ある程度民主主義的な状況から独裁主義へ移行し、独裁者はどんどん人間化していく、という流れが描かれている。
体制を素晴らしいものとして批判を許さない全体教育。 風説の流布、物理的に話を終わらせるシュプレヒコール、ひそかに行われる粛清。
スタートラインであった革命は確かに素晴らしいものであったのかもしれないが、結果はどうだ、と言わんばかりの生活環境の悪化があってなお、疑問を抱くことはあっても概ね従順に従い続ける民草。
一貫して、そして過剰なほど他の動物たちが騙されやすく、愚かに書かれているのが気になる。
独裁主義への批判、というのが一般的な見方でファンタジーとして楽しむべきではないのかもしれないけれど、ファンタジーとしても割と面白い。
象を射つ
表題作に続く2作はアジア文化圏支配中の欧州人の立場から書かれている。
どこへいってもぶつかる青年たちのセセラ笑う黄色い顔と、ぜったいにとっつかまる心配のないところまで逃げて、後ろからあびせかけてくる侮辱が、どうにもたまらなくなるほど、わたしの神経にこたえてきたのだった。その中でも、仏教の若い坊主がいちばんいけなかった。これは、町に数千人はいたが、みんな何も仕事がないらしく、ただ街角に立って、ヨーロッパ人とみると、嘲笑するのだった。
支配階級に対する逆差別の中で、違和感を抱きながら職務にあたる欧州人が、象を殺さざる得なくなる話。 支配階級とはいえ少数派で、さしたる地位もなく実務に当たる身であれば、群衆からの圧力は恐怖であったろうな、という当たり前のことに今更気づいた。
続く「絞首刑」もそうだが、被支配世界での少数派欧州人の、心の動きがとても興味深い。 拒否や葛藤を経て受容する一連の流れがよく描かれている。
なんならセールの時に英語版も買ってあったりする。

Animal Farm (Penguin Essentials)
- 作者:Orwell, George
- 発売日: 2008/07/29
- メディア: ペーパーバック