心ゆくまで崖っぷちで読む本

中小企業診断士(登録予定)の読書ブログ

【読書429】金田一耕助ファイル3 獄門島 (角川文庫)

結局続けて読んだ横溝正史

金田一耕助の目線で語られ、一緒になって騙される連続殺人事件。

復員後、友人の戦死を伝えるために獄門島を訪れた金田一

「自分が生きて帰らねば、3人の妹たちが殺される」

島の本家の一人息子だった友人の懸念の通りに、妹が一人、また一人と殺されていく。

こういう島で犯罪が起こった場合、その捜査がどんなにやっかいなものであるか、 (中略) 「なにか事件が起きると、全島一致結束してあたるから、お巡りさんも手の下しようがない。かれら同士のあいだに起こったいざこざ、たとえば物がなくなったとか、金を盗まれたとかいうような訴えにしたところで、お巡りさんが調べあげて、やっと犯人の目星をつけた時分には、向こうのほうでちゃんと和約が成立していて、いや、あれは盗まれたのじゃなかった、たんすの奥にしまい忘れていましたので……と、いうような調子ですから、のんきといえばのんきですが、また、場合によってはこれほどやっかいなことはありません」

動機面、実行方法は確かに因縁を感じたけれど、その間の島民たちの言動は意外とあっさりしている。

金田一の立ち位置が寺の客人という、守られた第三者であることも大きい。

閉鎖的な集落の怖さという面では「八つ墓村」の方がよほど怖く、推理小説怪奇小説というそもそものスタンスの違いを感じた。

なんとなく、思わせぶりな伏線が回収されないまま終わってしまった感がある。 (気狂いさんがなんでそうなってしまったのか、とか、雪月花たちのちょっとおかしい子エピソードとかもっと読みたかった。)

思いきって起きようかとも思ったが、ほどよい夜具のぬくもりが、けだるい体に快くて、飛び起きるほどの決心もつかない。それにあの、ポクポクと眠りを誘うような木魚の音が、だらけたいまの気持ちにとって、まことに快いのである。それはまるで、怠けろ、怠けろと、だらけた心を、いっそう誘惑するようであった。耕助はしばらくこの誘惑に身をまかせることにする。

毎朝の情景すぎて予想外に和んだ。