心ゆくまで崖っぷちで読む本

中小企業診断士(登録予定)の読書ブログ

【読書434】火打箱

火打箱

火打箱

アンデルセン童話を下敷きにした不条理ダークファンタジー

味のあるイラストが地味に怖い。 個人的には好きなんだけど、話の甘さというか、ツッコミどころも多数ある。

これくらいなら英語で読めそうだなぁと思い、安かったので購入。

Tinder

Tinder

  • 作者:Sally Gardner
  • 発売日: 2013/11/07
  • メディア: Audible版

しかし英語版はまさかのレイアウト固定本だった。 邦訳版がレイアウト固定じゃないから油断した。

以下ネタバレ含むあらすじ及び感想。

戦で兵士に村を焼かれ、家族を殺された主人公。 14にして兵士なるか殺されるかを選ばされ兵士になる。

兵士として参加した戦で負傷し森で死にかけていた男は謎の獣人に助けられ、行くべき方向を示すというサイコロを与えられる。

「きさまは恋に落ち、自分の王国を手に入れる。遠からずして」

そして、男はサイコロを振りながらの旅に出て、美しい少女サファイアーと出会い恋に落ちる。

追ってに阻まれ少女と分かれた男が次にたどり着いたのは魔女の城。洞窟の中にいる人狼のベルトを外し、火打箱を回収するように魔女に命じられた男は難なく火内箱と金貨を手に入れる。

魔女を倒し、城を後にし、森を抜け、親切な親方に連れられて、町にたどり着いた男。その町こそ、森で出会った少女サファイアーの父の治める町だった。

しかし町人は人狼の噂で疑心暗鬼、暗い雰囲気がただよう。 町として問題を抱えているのはもちろんだが、なんとなく町民の人間性が悪い。

捨てようとしても燃やしても必ず男のもとに戻ってくる火打箱。 紆余曲折で金貨を盗まれ、寒い宿の屋根裏に寝床を移した男はそこで初めて火打箱の使い方を知る。

火打箱には3体の人狼が閉じ込められており、その人狼たちは少女サファイアーの兄たちの呪われた姿だったのだ。 人狼の力でサファイアーと再開し、お金も取り戻す男。

最終的には黒幕だった継母と継母の愛人である王子を倒し、少女と結ばれハッピーエンドかと思いきや。

人狼の呪いを解くためには、身内の少女が火打箱を使うこと、そして呪いを解けば時間は巻き戻り、人狼たちは呪われる前へ、男はサイコロを受け取る前に戻ると知らされる。

火打箱を投げ捨てる男。しかし何故か少女のもとに。 何も知らない少女は、火打箱をつかう。

…という救いようがない話。

出会いの場面では凛々しく雄々しくすら描かれているサファイアーが、森を抜け白に戻った途端に少女的に描かれており、その辺は割と違和感があった。

前半は最近のプリンセスなのに、後半はやや気性は激しいもののオールドタイプのプリンセスに見える。

男を助けてサイコロを授けた獣人も何のために何をしたのか。

単純に時間が巻き戻れば、男が死のうと生きようと、兄と妹たちは今回と同じ呪われる運命が待っているだけではなかろうか?

ひょっとしてループものなのだろうか。 半獣の男が羽入なのか?

しかし、魔法が解けた主人公は、魔法にかかった人生の記憶を持ってるしなぁ。

その辺は考察の余地も含めて楽しめる人でないと、ただただぽかーんとしてしまうかもしれない。