分筆家の私、綿貫征四郎と、庭付きの日本家屋を舞台にした随筆風の小説。
私に懸想するサルスベリ。ボートで掛け軸から現れる亡友。犬のゴロー。小鬼に人魚、四季折々に出没する数多が自然の一部として当たり前に存在する世界。当たり前に受け入れる私。
植物の描写が豊かで、一見長野まゆみさん風。
文庫本にして200ページ足らずの短編で、5ページ程度の小話が続いて一冊になっている。
好きな人は好きだろうなぁ。
私は、一冊を一度に読むとお腹いっぱいであるが、季節ごとに一話ずつ読み進めるのであれば、色彩豊かで幻想的な純文学で、ゆったりとした気持ちになれそう。
お話の中の、可憐な少女が読むのにふさわしい一冊。