心ゆくまで崖っぷちで読む本

中小企業診断士(登録予定)の読書ブログ

【読書469】アリスマ王の愛した魔物 (ハヤカワ文庫JA)

一週間、ちょっと勉強して、週末にはSPIを2本受けたので、気晴らしに読書。 DMMブックスより。

これも読みたくて欲しいものリストインしていた作品。全5篇からなる短編集だ。

AIから人格への過渡期にある機械達を扱った作品が2篇。 一つ目はバイクAI、二つ目は自動運転とAIという乗り物をベースに、道具としてのAIからAIの人格獲得への過渡期を描く。 今後の技術革新で到達するかもしれない未来だ。

宇宙時代のお話2篇は、ハートフルストーリー。

そして表題作でもある「アリスマ王の愛した魔物」は架空のロストテクノロジーを御伽噺風に扱った作品である。

小川一水さんは、SF分野で確実に好きな作家さんの一人になりつつある。 きっかけは時砂の王だけど…、本作をみるとその作風は、ファンタジーぽいのから近未来、遠未来とバラエティ豊かだ。

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

「煙突の上にハイヒール」よりも、本作の方がよかったな。

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【読書468】「バカダークファンタジー」としての聖書入門

タイトルはこんなんだけど、かなり真面目な聖書の解説書。日本語での訳本を見比べて、解釈を比較して、自身の解釈を書いてある。

残念ながらレイアウト固定なので、電子書籍で読むのであれば、タブレット奨励。

架神さんは過去にも何冊かキリスト教を読み解いた書籍を出しているけど、そのベースとなった調査や勉強の結果というか、聖書をベースにきっちりとまとまっているけど、その分エンタメ性は低い。

エンタメ的に楽しみたい方は別の本の方が良いと思う。

仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫)

仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫)

旧約聖書新約聖書の全編の解説と、非ユダヤ教徒、非キリスト教徒な現代日本人にしたらそう見えるよねーという非常に共感できる内容。 脳内に?マークを浮かべながら聖書を読み解いていった結果をまとめました!みたいな本。

旧約はヤンデレヤハウェは問答無用で殺戮しまくる歴史の本で、新約は面倒見の良いヤンキーヘッドっぽいイエスの物語とパウロの妄言をメインとした私小説集、というのが全体としての見解だろうか。

新約に移って随分話のスケールがこじんまりとしたな?と思った。

英語学習を始めて、海外ドラマに触れる機会が増えて、結果として(画面ごしではあるけど)クリスチャンやユダヤ人を目にする機会が増えた中、そういったキャラクター達の発言や行動のベースに対する理解を深めるのに非常に良い。

架神さんの書籍は結構読んでいるんだけど、あんまり記事アップしていないなぁ。

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完全教祖マニュアルが好きだった。

DMMセールでかなり本を買ったけど、結局追加で買うのである。 やっぱりあの時、100冊行っておくべきだったか…。

【読書467】こうえんのおばけずかん じんめんかぶとむし (どうわがいっぱい)

児童書久しぶりかな、と思ったけどそうでもなかった。

レストランのおばけずかん ふらふらフラッペ (どうわがいっぱい)」でおばけずかんにはまった子供に頼まれて、Kindle版を購入。 …したんだけど、Kindle kids +に入っていたという…。

アニメ化もされたのかな?

色々なおばけと、遭遇したら何が起こるか?、避けるにはどうしたらいいかが書かれている。

図鑑というより、紹介文集。見開き3-4ページでコンパクトにまとまっていて絵もふんだんなので、絵本から児童書への移行時期に良い感じ。

割と害のない子が多くて、おばけよりは妖怪の方がイメージに近い気がする。 教訓じみたオチがついている話も多いけど、そこまで積極くさくもない。

保護者としてはかなり安心して与えられる部類に入ると思う。

「どうぞ」が好き。 背負われて公園を一周されるの、地味に困る。

漢字ドリルもあるみたい。

Kindleキッズプラスのおかげで珍しく子供がザクザク読んでいる。

【読書466】脳に棲む魔物

脳に棲む魔物

脳に棲む魔物

DMMブックス。

ジャンルとしては闘病記になるのだろうか。 24歳で自己免疫性の脳炎を発症したジャーナリストのルポタージュ。

発症後の情緒障害から、仕事を続けることができなくなり、実家へ、やがては入院生活へ。

幻聴や幻覚、被害妄想などの情緒障害に加えて、急激な発作が生じているにも関わらず、各種感染症、自己免疫疾患についての様々な検査の結果は、彼女が至って健康体であることを示す。

原因不明のまま、経験ある医師たちが彼女に下そうとした結論は「精神病」、双極性障害統合失調症だった。 しかし、彼女の運命はたった一人の医師との出会いによって変わり始める。

病をきっかけに狂う人、そしてそれを呆然と見つめるしかない仲間、家族の戸惑い、苦悩は如何程であったか。

わたしの治療には百万ドルかかった。その数字にはたまげる。幸いなことに、当時のわたしは《ポスト》の正社員であったため、法外な治療費のほとんどを保険でまかなえた。それにサポートシステムも整っていた。保険会社がカバーしない、あるいは補塡しないものについては、自費でまかなえるだけの財力が家族にあった。あいにく、精神科の病気と一生涯戦わなくてはいけない人々に同じ安全ネットが用意されているわけではない。その種の病気を患っている人は定職に就けないため、障害者手当やメディケイド(訳注 医療保険に加入できない低所得者や身障者のための公的医療制度)に頼るしかない。

100万ドル、日本円で1億円以上。

後書きで自身が語るように、彼女は非常に運が良かったのだろう。少なくとも財政面での不安が少なく(それでも家族がその金額にも戦々恐々としたであろうことは想像に難くない)、ほんの三年前に原因となる抗体が特定されていた。

ほんの少しの運命のずれで、精神病棟で過ごす道、死に至る道、あるいは悪化してからの発覚で快癒しても元には戻れない道など、様々な道があった。

ティーヴとスティーヴンが出てくるので、混乱する。

章立てが細かいので、原書も読みやすそうである。 原題は「Brain on fire」、燃えている脳。

邦題はいまいちかなと思う。日本語はすぐ「魔」のせいにしたがるよね…。

映画はかなりあっさり。スティーヴがリチャードになっていたから、やっぱりややこしかったのね。

彼女が目覚めるその日まで [DVD]

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脳機能が損なわれることによる、人格への影響を本人が語った例は下記にも。

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彼女が2度目に倒れた年齢を超えた。 今、自分の身に降り掛かったら、と考える。

【読書465】黄金の王 白銀の王

だいぶ前からほしい物リストに入れていた本。

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

DMMブックス。

兄弟同士の王位争いに端を発する内乱が長く続く国翠に同じ年頃の二人の王があった。 歴史は両者に勝敗もたらし、片方を統べる王、片方を幽閉される王とし、負けた方には迫害の日々を与えたが、天下分け目の戦いでの風向きに次第で、どちらが統べる道も、幽閉される道もあった。

幽閉される王が元服を迎えようという頃、幽閉の丘は襲撃され、統べる王は決断を迫られる。

統べる王は国力を高め国を安定させるためには、私怨を捨て氏族の垣根をなくすことが大事と解く。 統べる王の説得に応じ、自身の名を捨て統べる王の妹を娶り、和平への協力を承諾する幽閉された王。 しかしそれは、苦難の日々、さらなる幽閉の日々の幕開けであった。

仇同士でありながら、義兄弟となり、やがては二人の絆を描く骨太ファンタジー

統べる王は策略に長け、目的のために手段を選ばない苛烈な人物に見せかけて、非常に人間的である。 一方で、幽閉された王は人を惹きつける力を持ちながら、その判断は冷淡である。 真逆の性質が、真逆の環境で育ち、生き、お互いに憎しみ合い、嫉妬しながらも認めあうというのは、こういうことなのか。

二人とも与えられた環境ゆえに、己の性質を殺し、役目を全うしようと生きる。 別の時代であったなら、せめて互いに歪み合わなければならない時代でなかったなら、タイプの異なる二人は、争いの火種か良き盟友のどちらになったのだろう。

タイトルは黄金が先なんだな、と思う。

この手の王宮ものは、最近は女性目線、後宮目線のものばかりだったので、毛色が違ってとても面白かった。 続編は無いようで残念だ。

なんとなく塩野さんの作品に近い気がする。

DMMブックスのセールで買った本の当たり率が高くて嬉しい。 55冊買って、11冊読んでしまった。 やっぱり100冊いっておくべきだったのかなぁ。