心ゆくまで崖っぷちで読む本

多読してTOEIC430点から630点→700点を目指すブログ

【読書457】娼婦たちから見た日本 黄金町、渡鹿野島、沖縄、秋葉原、タイ、チリ

気づいたら記事のストックが無くなっていた。 そもそもあまり読んでいない。

国内外、新旧の色街や嬢を取材したルポ。 青森の事件で紙面を賑わせたアニータさんなども取材している。

性を扱う問題、またその商売は、時代によっても位置付けが異なり、非常に興味深い。 海外の色街に出荷され、病に倒れる者、あるいは生きてかえった者。出稼ぎ先の色街でHIVをもらい、妻にうつし、自身も死を待つ身である者。自身の生活のため、仕送りのため、成功を夢見て、あるいは楽しみとして春を売る者。

とても、ダイバーシティを感じる。

日本には売春禁止法があり、公的には禁止されている。 本書では行き場のない女性たちの救済としての売春についても取り上げられているが、売春という制度、色街が残ることが、作者の主張のとおり必要悪と言えるのだろうか。

「有名なルポライターが書いてる通りの職場なんだ。怪我して、指を落としそうになっているのに病院に連れていかないで、しかも休ませないで会社に来させるんだ。怪我した事実を少しでも隠蔽するためにね。休みの日も会社のイベントがあって、あんまり外の連中と付き合わせないように仕向けるんだよ。外の世界を見せちゃうと会社人間じゃなくなっちゃうからね」

沖縄のタクシー運転手の半生が語られる場面だが、あの本のことかなーと思う。

外野から見ると、当時のマインドは今でもあって、一種の宗教王国なんだろうな、という印象。

【読書456】始祖鳥記

すごくよかったのだけど、よかったがゆえにどう感想を書いて良いか分からない。

始祖鳥記 (小学館文庫)

始祖鳥記 (小学館文庫)

災害が続き社会不安が強くなった天明の時代、巨大な凧にのり、空を飛ぶことを目指した男がいた。 名前は幸吉。空に魅せられ、受難の末に空に立った男の数奇な半生を描く。

表具師、巻物や屏風に布や紙を貼り仕立て上げることを生業とする職業である。 若くして銀払いの表具師という恵まれた立場にありながら、何故幸吉は飛ぶことを求めずにいられなかったのか。 同じく表具師として生活を共にしていた弟の静止も聞かず、凧を使った飛行を研究し続ける幸吉。 一方で天災と伴う食糧難を契機とした、民衆の御上への不信感が、彼を英雄に仕立ててしまう。

古来怪鳥の噂は、必ずその時々の権力に対する民の非難として立ち現れる。

幸吉の闇夜の飛行実験は「イツマデ、イツマデ」の鳴声をあげる鵺と噂され、やがては家財を没収され、備前岡山を追放される。 岡山時代の幸吉は、かなりエキセントリックで近寄り難い。 その後船に乗り込んでからの様子は、憑き物が落ちたように穏やかに見える。

船を降り、再び陸で暮らし始めてからの幸吉は、才気に溢れた人格者として生きる。 遠方で一人歩きした鵺の噂(もはや伝説と化している)に、自縛を解かれるシーンはなかなか興味深い。

財を成し養子を取り安定した生活を手に入れた後も、否、安定した生活を得てしまっからからこそ、幸吉は結局は己の性から逃れられない。 優秀であったが故の不幸ともとれる。

何かを成す人間は、何かが過剰か欠落している。

【読書455】ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

本屋に平積みされていたシリーズがプライムリーディングに入っていたので、読んでみた。

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

  • 作者:廣嶋 玲子
  • 発売日: 2013/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

白髪だけどお婆さんと呼ぶには若い女性、紅子さんの営む駄菓子屋銭天堂。 銭天堂はただの駄菓子屋ではない。 選ばれたお客にだけ、特別な駄菓子を売るふしぎ駄菓子屋なのだ。 特別な駄菓子をめぐるショートストーリーがオムニバス形式で数話収録されている。

特別な駄菓子には特別な効果があるが副作用もある。添えられた注意書きを守らなければ様々なトラブルも起こる。

話によっては結構怖いオチがついている。 シンプルな勧善懲悪に、ちょっと毒がある感じが人気の理由だろうか。 一巻では銭天堂の主人紅子が物語に直接絡んでくることは少ないが、そこがまた裏で糸を引く悪役のような雰囲気で、一筋縄ではいかない癖のある人物像を印象付ける。

小学生には大人っぽく、中高生には少し子供っぽい。絶妙なバランスがいいんだろうなぁ。

選ばれ迷い込んだ人々の運命は、紅子から買った駄菓子を通じて少しだけ変わる。 良い方に変わるか、悪い方に変わるかはその人次第だ。 良い方に変われば紅子の勝ち、悪い方に変われば紅子の負け、と何やら賭け事をしている風の紅子。 物語がこの後どの様に展開するのか、続きも気になる作品だった。

【読書454】トウェイン完訳コレクション アーサー王宮廷のヤンキー

久々に紙の本。お風呂読書用。積読ではあるのだが、KindleではないのでKindleの未読は減らず。

お風呂で読むのはだめだった。 面白くて止まらない。章立てが細かめなのを良いことに、あと一章、もう一章を繰り返してついつい長風呂になってしまった。

アーサー王の時代にタイムスリップした技師が現代(作品が書かれた1880年代)の科学知識をもとに火薬や電話など数々の発明を魔法として、アーサー王の王国で成り上がっていくサクセスストーリー。

以下、ネタバレ含む。

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【読書453】やなせたかし 明日をひらく言葉

prime reading。

アンパンマン」の原作者で知られるやなせたかしさんの作品の一説と、エッセイ的な文章を組み合わせて編纂したものなのかな。

おそらく紙の本では見開き2ページで1項目になっているのだろうけど、エッセイ部分が細切れにされてしまい、なんとなくテンポが悪く残念であった。

戦争が終わると、アメリカからスーパーマンというヒーローが登場した。テレビ放送が始まると、月光仮面ウルトラマンなども出てきた。  けれど、彼らは飢えた人を助けに行くことは全然しない。(中略) いろんな兵器が次々と出てきて、ドンドンパチパチと派手に火花を散らす。それがカッコよく見えて興奮するなんて、一種の「戦争賛美」のように思える。子どもたちの潜在意識に悪い影響が残らないかと気になってしまう。 そうした疑問から、本当の正義を行う新しいヒーローを描きたいという気持ちになっていった。

原作者の意図はさておき、アンパンマンはアンパンチでバイキンマンを吹き飛ばす。

アンパンマンはヒーローだけど、アンパンチはだめだよねー。」と3歳児に突っ込まれたりする。

当時のアンパンマンは、パンを配るおじさんだった。自分でパンを焼いているからマントも焼け焦げだらけだ。顔もハンサムじゃない。空を飛んで戦地に行き、お腹のあたりからアンパンを取り出して子どもたちに配る。でも、国境を超えるとき、未確認飛行物体と間違われて撃ち落とされてしまうというお話だった。

なんでなかなか売れなかったのかが窺えるエピソードだと思った。

「正義を行おうとすれば、自分も深く傷つくものだ。でも、そういう捨て身、献身の心なくして、正義は決して行えない」ということだ。

正義に限らず、みんな色々なものを秤にかけて、何かを捨て、何を選んでいる。

結構面白かったけど、これじゃなくてもいいかなぁ。