心ゆくまで崖っぷちで読む本

中小企業診断士(登録予定)の読書ブログ

【読書466】脳に棲む魔物

脳に棲む魔物

脳に棲む魔物

DMMブックス。

ジャンルとしては闘病記になるのだろうか。 24歳で自己免疫性の脳炎を発症したジャーナリストのルポタージュ。

発症後の情緒障害から、仕事を続けることができなくなり、実家へ、やがては入院生活へ。

幻聴や幻覚、被害妄想などの情緒障害に加えて、急激な発作が生じているにも関わらず、各種感染症、自己免疫疾患についての様々な検査の結果は、彼女が至って健康体であることを示す。

原因不明のまま、経験ある医師たちが彼女に下そうとした結論は「精神病」、双極性障害統合失調症だった。 しかし、彼女の運命はたった一人の医師との出会いによって変わり始める。

病をきっかけに狂う人、そしてそれを呆然と見つめるしかない仲間、家族の戸惑い、苦悩は如何程であったか。

わたしの治療には百万ドルかかった。その数字にはたまげる。幸いなことに、当時のわたしは《ポスト》の正社員であったため、法外な治療費のほとんどを保険でまかなえた。それにサポートシステムも整っていた。保険会社がカバーしない、あるいは補塡しないものについては、自費でまかなえるだけの財力が家族にあった。あいにく、精神科の病気と一生涯戦わなくてはいけない人々に同じ安全ネットが用意されているわけではない。その種の病気を患っている人は定職に就けないため、障害者手当やメディケイド(訳注 医療保険に加入できない低所得者や身障者のための公的医療制度)に頼るしかない。

100万ドル、日本円で1億円以上。

後書きで自身が語るように、彼女は非常に運が良かったのだろう。少なくとも財政面での不安が少なく(それでも家族がその金額にも戦々恐々としたであろうことは想像に難くない)、ほんの三年前に原因となる抗体が特定されていた。

ほんの少しの運命のずれで、精神病棟で過ごす道、死に至る道、あるいは悪化してからの発覚で快癒しても元には戻れない道など、様々な道があった。

ティーヴとスティーヴンが出てくるので、混乱する。

章立てが細かいので、原書も読みやすそうである。 原題は「Brain on fire」、燃えている脳。

邦題はいまいちかなと思う。日本語はすぐ「魔」のせいにしたがるよね…。

映画はかなりあっさり。スティーヴがリチャードになっていたから、やっぱりややこしかったのね。

彼女が目覚めるその日まで [DVD]

彼女が目覚めるその日まで [DVD]

  • 発売日: 2018/06/22
  • メディア: DVD

脳機能が損なわれることによる、人格への影響を本人が語った例は下記にも。

insolble.hatenablog.jp

彼女が2度目に倒れた年齢を超えた。 今、自分の身に降り掛かったら、と考える。