心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書139】エピデミック

エピデミック」(川端裕人/角川文庫)

C県T市。首都圏からほど近い漁村の崎浜地区。

人口3000人ほどの温暖な小さな町で、インフルエンザでは珍しい青壮年の重症患者が連続で発生した。

突如の高熱、脳炎、そして死。

たまたまC県を訪れていたフィールド疫学者、島袋ケイトは、感染拡大の真っただ中にある崎浜地区で原因調査を開始する。

ケイト達は新規の伝染病のアウトブレイクを阻止できるのか。被害はどこまで続くのか。

バイオサイエンスフィクション小説だ。

ケイトをはじめとする国立集団感染予防管理センターのメンバーを探偵役、病気の原因を犯人役とした疫学ミステリともいえる。

登場人物が多く視点がばらける点や、思わせぶりが回収されない点は賛否両論だと思うのだけど、混乱の只中、様々な人々が様々な立ち位置から各々混乱している風で私としては面白かった。

おそらく実際の現場も、真偽不明な噂、デマ、情報に攪乱される。そして、それらしく見える多数の情報が、真とは限らない。

余りに情報が少ないと誤差範囲が大きくなるし、多数の症例を集めて見出した傾向が、本当に正しいとも限らない。

総じて良いSFだと思う。

本文中でケイトも言っているけど、疫学は難しい。

統計を駆使した科学的な手法であるのは間違いないけれど、聞き取りによるデータをベースにしている以上、聞き取り方でまったく違う結果が出てしまうこともあるだろう。

ケイトは怒るだろうけど、疫学を科学じゃないという気持ちも正直少しわかる。

統計を駆使するという点で間違いなく科学なんだけどね。

レベル4 致死性ウイルス」を思い出した。

「レベル4」がドキュメントであるのに対し、本作はフィクションであるけど、疫病の発生から流行の鎮圧、あるいは治療方法の確立を目指すという点で近い作品だと思う。

「レベル4」も既に情報としてはすでに古いにしても、面白い一冊です。

書評を書きたいのだけど、何分読んだのが昔&手元に本がないので難しい。