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【読書172】丕緒の鳥

丕緒の鳥 十二国記」(新潮文庫/小野不由美)

丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫)

 

テーマは国の荒廃と民の足掻き、とでも言おうか。

「王が居れば国は安定する。」

これが絶対の天の理である十二国記の世界で、王が倒れる間際、あるいは空位の時代にあって、荒廃していく国土や歪みと戦う、民草を描いた短編が四編収録されている。

 

丕緒の鳥

表題作。百数十年、五人の王に仕え羅氏の中の羅氏と名高い丕緒は慶国の新王即位に伴う大射の準備を命じられた。

大射に用いる陶鵲の作成を通じて、失った親しい者たちの真意に気付いてゆく。

丕緒は技術者であり職人であり表現者であろうとした人間であり、王が立ち代り入れ替わりする中で失意の中にいた人間なのだろう。

 

「落照の獄」

国が傾いていく最中にある柳国で発生した大量殺人をめぐるお話。

時期的には前作の「華胥の幽夢」における「帰山」の前後だろうか。

柳国の司法をつかさどる秋官、瑛庚を中心に王の命により一度は凍結された死刑制度の再開を巡る議論。

現代における裁判制度にも通じる議論で読後の苦々しさが増す。

 

「青条の蘭」

どの国が舞台だろうか。冬の厳しさが描写されていることから、北の国と想像される。

先王の圧政とその後の空位で国の荒廃が進む頃、国内では山毛欅(ブナ)の木が石化する奇病が蔓延しつつあった。食糧としても木材としても、利用価値が少ない山毛欅。だが硬化した山毛欅は木材として高値で売れるため、人々は利益を享受した。

そして疫病は広がり、やがて深刻な事態をもたらす。

山における木の実が減り、動物たちの食糧が減少したことで、熊や鼠は里に降りて畑を荒らす。山から木々が減り保水力を失ったことによりもたらされる春の雪崩、夏の乾燥。

疫病に対抗すべく躍起になる標仲。そして得た「青条の蘭」…。

 

「風信」

陽子の先王、女王舒覚の時代の末期。全ての女に対する国外追放令が出されたころ。

軍による虐殺で父母、妹、祖父と家族失いながら生き延びた蓮花は、摂養の街で暦を作成する監視である嘉慶のもとで、下働きとして暮らすことになった。

トラウマの克服には時間がかかる。そういう意味でも蓮花はスタートラインに立ったばかり。

「青条の蘭」も同様だが、希望と余韻を残す。

 

全体に慶国はよく描かれるなぁという印象がある。

女王が続き、そのどれもが在位が短く、荒れた国、動きのある国として描くのによい設定を持った国なのかもしれない。

そろそろ、長編が読みたいです。

 

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