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【読書237】ぶらりミクロ散歩ー電子顕微鏡で覗く世界

ぶらりミクロ散歩――電子顕微鏡で覗く世界」(田中敬一/岩波新書)

 

電子顕微鏡といえば、研究室の最奥にどでんと鎮座して、高額巨大実験機械の代名詞のようなものじゃなかろうか。

それが、近年、低真空走査電子顕微鏡というものが開発され、高校や町工場に設置されるようになっているという。

 

でもね、さすがに一般家庭に電顕室はないと思うんだ。

著者の田中敬一さんは超高分解能走査電子顕微鏡の開発に携わり、HIVウィルスやT2バクテリオファージの撮影に成功、現在は私設の電顕研究所を運営する、いわば電子顕微鏡スペシャリストである。

いいなぁ電顕室。羨ましいなぁ電顕室。

そんな気持ちになる電顕観察エッセイが本書だ。

 

とりあえず、最初の観察をすごくざっくり要約するとこんな感じである。

>鼻毛が抜けたから、電顕で観察して見ることにした。

>なんか動物の毛と比較したくなったからマンモスの毛と比較した。

>試料箱にパンダの毛があったからそれも見てみたよ☆ミ

なぜある、マンモスの毛!!

なぜある、パンダの毛!!!

 

激痛の尿管結石すら、観察したくて心待ちになってしまう。チャドクガに刺されたらチャドクガの針が気になるし、綺麗なボタンがあったら覗いてみたくなる。

すぐ身近にある「あなたの知らない世界」である。

 

かと思えば、うなぎの稚魚であるレプトケファルスの腸内残存物の同定の話など、専門家だからこその話もある。

あくまで電顕のスペシャリストであるから、考察や比較は他にお任せして、というスタンスも良い。

いい感じに脱力系とでも言おうか。理系的遊び心に溢れた本である。

 

余談だけど、本書を読んでいたら学生時代のことを色々思い出してしまった。

 

電顕でヤクルトのヨーグルトからL-カゼイシロタ株(?)を見たのはいい思い出。動いてた。

オートクレーブ(※1)で焼き芋伝説は羨ましかったけど使い込まれたオートクレーブでは勇気が足らなかった。噂によると超美味しいらしい。

ちなみにアイスクリームメーカーの冷却部を試料保管庫(※2)で冷やすと、中に入れた液体が早く固まりすぎて、上手く出来ないからみんな気をつけてね。

 

※1 オートクレーブ

高温高圧になる装置。生物系では器具の滅菌や培地作成に使用する。別分野ではカーボンを焼いたりもする。

焼き芋つくると美味しいらしい。

※2 試料保管庫

試料や酵素の長期保管に使用する。-28℃とかだった気がする。

アイスクリームメーカーの冷却部を冷やすのには適さない。一瞬で固まりすぎて攪拌にパワーが必要になる上、滑らかにできない。

停電時、この保管庫の温度維持が完遂できると祝賀会が催される。

 

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