心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書297】彼女のこんだて帖

彼女のこんだて帖」(角田光代/講談社)

 

 

食べることは生きること。

本書は誰かの日常のなかにある食事がモチーフの連作短編集である。

 

ある話の脇役が主人公となって次の物語へと繋がっていく様子は、まるで、日常の家庭料理のようだな、と思った。

なんだか、昨日の副菜に使われていた食材が、今日のメインとなっている感じ。

 

恋の日のラムステーキ、主婦ストライキのミートボールシチュー、拒食症になりかけの妹に送るピザ、受験生のうどん…。

 

不思議なことに、食べないという行為は、本来隠しておくべき欲望が、剥き出しになっているような印象を与えた。(76ページ)

だとしたら、本書の主人公たちは、食べるという行為で、様々な欲望、本音をひた隠しにしているのかもしれない。

それぞれのこんだてが、料理をするという行為が、具体的だった不満や不安を飲み込んで、浄化していく。

 

たぶん、料理はセラピーなのだ。

こんだてを考えて、レシピを考えて、実際に手を動かして、そして食べる。

頭も体も使って、最後には美味しいという快楽をもって完結する。

 

さてさて、他のご家庭の家庭料理を覗いているような気分になる、本書。

特に、ちまきがとても美味しそう。

巻末にはレシピが掲載されているので、近々チャレンジしてみようかな?