心ゆくまで崖っぷちで読む本

読む読む書く書く、時々考える(旧insolble)

【読書146】刺繍する少女

刺繍する少女」(小川洋子/角川文庫)

 

刺繍好きとしてタイトルにひかれて購入。

しかし刺繍はあんまり関係なかったですw

 

今際に、アルバイト中に、不倫、デートの瞬間に。

自己として、他己としてそれぞれの主人公たちが接する狂気。

淡泊な語り口に騙されてあっさり気分で読むと実はゾクゾクするお話ばかりが収録されている短編集。

 

母が暮らすホスピスで、子供のころ、高原で遊んだ少女に再会する表題作の「刺繍する少女」。

全体に流れる雰囲気が美しく儚く妄想と呼ぶにはあまりに幻想的だ。

 

耳の奥のぜんまい腺をとられ収容所で暮らす男が、収容所の外側の女性を得ようとする「森の奥で燃えるもの」、寄生虫の図鑑を眺める女性の「図鑑」などで描かれる他人への執着はエゴイスティックで醜悪。

主人公の歪みが描かれるこの二作に対して「第三火曜日の発作」では主人公本人は若く美しい少女であるが、相手となる宝石商の男がいびつな感じ。

 

中絶後の女性と定年退職前日の警備員を描いた「キリンの解剖」。

どうでもいいけど、気になるよ、キリンの解剖。カンガルーの解剖。

 

「妊娠カレンダー」を読んだ時も同じように感じたのだけど、ごく身近に生じる狂気を読後に、じわじわと感じる。

繊細な文体で語られる、各個人が、人として持つエグさの様なもの。

 

小川さんはエグいのに不愉快じゃないから、時々読みたくなる感じだ。