心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書264】泥ぞつもりて

泥(こひ)ぞつもりて」(宮木あや子/文藝春秋/ひたちなか市立図書館所蔵)

 

清和、陽成、そして宇多…。平安時代前期、三人の天子の影にあった後宮の女たち。

そこに藤原家の思惑も絡み合って、濃密な時の流れる愛憎劇である。

短編形式でまとめられているが、共通して出てくるのは清和帝の妻であり、陽成帝の母であった藤原高子であるから、彼女の生きた時代の物語、と取れなくもない。

 

義務感、恋心、思惑、そして愛憎。

現代の価値観で、考えたり評価するのが馬鹿らしい。高位で有るが故に、業を背負わざる得ない者は、他の身分に生まれていれば、と夢想し、夢想した身分を得たはずの者が、思うようにはいかない現実に苦悩する。

「思い」が「生霊」となって人を殺しても、何の不思議もないような空気感である。

 

平安時代について詳しい方であれば、ひょっとしたら色々突っ込みどころもあるのかもしれない。

残念ながら私は、あまり詳しくないのでそういったツッコミを入れることが出来ないのだが、平安を舞台にしたいわゆる「お話」としては十分に楽しめるものであった。