心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書293】魔女の宅急便3 キキともうひとりの魔女

魔女の宅急便3 キキともうひとりの魔女(角野栄子/福音館/ひたちなか市立図書館書蔵)

 

不幸になるための近道の一つ。

それは他人と自分を比べて、他人を羨むことなんじゃないだろうか。

それだけで人は誰でも簡単に不幸になれる。

 

本作のキキはまさにそんな不幸に自ら陥っていっている。

 

独り立ちをして4年目…、新社会人で考えると、日々の業務に慣れて実戦力として信頼を得ていく時期である。天狗になりやすい時期であると同時に、これまでとは違う課題にぶつかって、大きな挫折を知る時期。

 

そんなタイミングのキキの前に一人の少女が現れる。

真っ黒な衣装に勝ち気で生意気な態度。ケケである。

キキと成り代わろう、キキの立場を奪い取ろうとしているかのような言動を繰り返し、ちゃっかりと自分の居場所を確保してしまう。

 

トンボさんたちの仲間になること。おしゃれをすること。それらは全てキキが憧れながら、望みながら手を出せずにいたことだ。

立場の違い。考え方の違い。ケケの存在によって、キキの「独り立ちをする(働く)」ということの意味、不自由さが浮き彫りにされる。

 

キキもまだ思春期真っ只中の16歳。

ときには浮かれた行動を取ってしまうし、比べられて劣等感にとらわれもすれば揺らぎもする。

 

最後には和解と相互理解で、少しだけ上向くラストシーンではあるのだが、全話を通して漂ううじうじ感を払拭するには至らず、なんともすっきりしない読後感だった。