心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書334】帝国の女

久しぶりの図書館本、久しぶりの宮木あや子さん。

帝国の女

帝国の女

 

 

「野良女」のセルフオマージュ的作品かな、と思う。
「野良女」が同じ大学の出身者、同年代という共通点で結ばれていたのに対して、本作は「帝国テレビジョン」というテレビ会社を通じてつながっている。
このため、本作の主人公となる女性たちは野良女よりも広い年齢層、広い職業となっており、世代を超えた友人、というか、仕事上ちょっと関係のある人たちという描かれ方をしている。共通するのはみんな激務であるということ。
宣伝、製作、脚本家、記者、そして付き人。美人だけど絶望的に男性に対して鈍かったり、芸能人に命を懸けていたり、わけありだったり。それぞれの立場で、限界まで働きながら、プライベートに悩む女性たちを描いた連作集。

「野良女」エピローグとして焼肉女子会が設定されているところまで一緒で、率直に言えば焼き直し感が強い。しかし、残念ながら、作品としての出来は「野良女」の方が上である。


「野良女」の面白さは誰もが好き勝手にやって、自業自得で苦しくて、だけど前向きなハッピーエンドというところにあった。彼女たちの悩みは自分の近くにもあって、それがリアルな面白さにつながっていた。
だけど、本作は人物設定も、非常に特徴的な人物像で、驚くほどリアリティがない。かといって、漫画的人物像たちが繰り広げる魅力的なかけあいがあるわけでもない。

おそらくは、バイタリティあふれる仕事に打ち込む女性が、ぽっきり折れる瞬間を書きたかったのかな、と思う。
たとえば忙しさにかまけて彼氏に振られてしまった時。きたない手を使ってでも手に入れたいと望んだ男性と離婚すると決めた時。あるいは、けがに倒れ、商品であったはずのアイドルの卵に告白された時。
「忙しい」や別の何かを言い訳に、目をそらし続けていた現実に向き合わなければならなくなる一瞬。そして、向き合えなくなる一瞬。

出来る女で成功者である彼女たちは自制心をもって、自分の感情を処理していく。激務に耐えきれる心身のタフさを併せ持つ彼女たちは、肝心のところで間違ったりはしないし、醜態をさらしたりはしない。それは働く女性が求めるヒーロー的女性像なのかもしれないし、独身女性としての矜持なのかもしれない。
だけど、少なくとも私は、完璧超人が壁を軽々超えるだけの小説には面白味を感じない。
忙殺されて結果的にしてしまった選択ではなくて、きちんと自らの意志で天秤にかけた時に、彼女たちはいったいどうするんだろうか。
ぽっきり折れて、醜態をさらしてほしいと思うのは、仕事で成功していない女性の醜い嫉妬なのかもしれない。

 

野良女 (光文社文庫)

野良女 (光文社文庫)