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【読書023】恐竜はなぜ鳥に進化したのか

恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた」()

恐竜がどのような生物であったのかについての考察が読みたくて借りてきた一冊。

どちらかというと古代~の生物の進化について述べられた一冊でした。

内容はちょっと難しい。眠くなる。読むのに時間がかかる。

高校生物、高校化学くらいはしっかり覚えていないと、理解できないところが多いんじゃないかと思います。

かくいう私も、ちょっとあやしい。

内容としては、酸素濃度の予測値とそれに基づく生物の進化、でしょうか。

肝心の恐竜についての推測は、八章以降まで出てこない。

カンブリア紀から今に至るまでの、古生物の進化学、環境と照らし合わせた形態学がメイン。

内容が難しすぎて、あまりお勧めできない。基本的に、仮説の提唱とそのなの検証、考察なので、繰り返しが多くかったるく感じます。読み物と言うより科学書といった趣。

大学で生物や化学、考古学を学んだ人におすすめ。

そもそも本書は、恐竜が鳥の祖先だと言う前提に書かれています。

東京に住んでいたとき、上野の科学博物館が大好きでよく行って、ティラノサウルスの化石とかよく眺めてたんですけど、確かに、足の付き方とか、は虫類よりも鳥類に近い。

は虫類は体の横に足がついているけど、鳥類は体の下に足がついているイメージ。

で、ティラノの足は体の下だよね。

最近の研究では羽毛が生えていた羽毛恐竜なんかも発掘されていたり。

そりゃ、は虫類より鳥だわな。

私の幼少期、図鑑の絵はどちらかというとは虫類ぽく書かれていた気がするけど、そもそも出土するのは化石で、基本的に皮膚とかはないから、図鑑での恐竜の色合いや外観は、骨格からのイメージズなんだよね。知った時は結構ショックだった。

それでも、二種類は、色と模様が正確にわかっているみたい。今後もっとわかるようになるかもね。

現在では、は虫類ではなく鳥類に進化したものを、恐竜としている模様。つまり、現在の分類上は虫類は恐竜ではない。これが大前提。

・・・そんなわけで恐竜を、でっかいダチョウだと思うとがっかりですが、でっかいチョコボだと思うとちょっと楽しくなるよ!

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各章の概要は以下にしまいます。

長文。

一章では、酸素をエネルギー源として利用することの意義、水酸基-水素結合のエネルギー的な優位性から始まり、生物にとっての酸素の重要性を述べている。

化学的見地から、水酸基-水素結合は、フッ素-水素結合に次いで、二番目に大きなエネルギーをとりだせる化学結合である

しかし、フッ素は有機物と反応し、爆発反応を起こすため、水酸基-水素結合は、生物が事実上利用可能な最高エネルギー源ということになる。運動という莫大なエネルギーを要する活動を行う動物にとって、水酸基-水素結合の利用、すなわち酸素の利用は非常に有為であったと考えられる。

二章では、過去から現在までの地球上の酸素濃度、二酸化炭素濃度の予測値を元に、生物進化への酸素影響を論じている。

二酸化炭素濃度と大量絶滅、進化速度との相関から、進化速度に影響を与えるのは温度や酸素ではないかという仮説、またその検証である。

動物の進化には、適応度の向上と物理的、生物学的な環境要因の変化への反応としてという二つの要因がある。

酸素濃度の変化は、地球全体に影響を及ぼす最大級の環境要因の変化であり、これに伴い、生物の進化、大量絶滅が生じたことは、イメージしやすい。

すなわち、酸素量の急激な低下により、大量絶滅が生じ、低酸素条件に適応するため、進化がおこり新種形成がなされるのである。

以上2章を前文として、三章以降では各時期における酸素濃度と生物の進化について述べられている、

三章では、カンブリア紀大爆発から、古代生物における呼吸器の形態学的、機能的考察が述べられている。

一章二章に比べると幾分か読みやすい章である。

現在よりも遥かに低酸素状態であったカンブリア紀の水中において、三葉虫アノマロカリス、あるいは原始的な軟体動物の化石や痕跡、また現在の水生生物の情報から、それぞれの形態が呼吸にどのように有利であったか、また、呼吸に有利であるにはどのような形態であるか、という観点からそれらの形態を予測している。

一例として、軟体動物の一グループから発生したと思われる頭足類は、鰓による酸素接種の効率化、さらにはジェット噴水力を獲得するに至る。これら機能を持って、その後のオウムガイとして長期間繁栄し、現在に至ってもイカやタコという生物として残存している。

四章では、オルドビス紀における、生物の進化と絶滅についてである。

生物が大量に絶滅した後には、空いた生態的地位を満たすために生物の急速な進化が見られるのが普通であり、カンブリア紀末期の大量絶滅の後も同様である。

オウムガイが最上位の捕食者になり、原始的な魚類が出現する。

五章ではシルル紀デボン紀の酸素量の急増とその結果、動物の陸上進出について述べられている。

シルル紀は高酸素時代である。地上には多様な維管束植物や昆虫類が出現する。

陸上生活初期の動植物、すなわち未発達な肺機能、酸素吸収機能しか持たない初期動植物に有利に働いたのかもしれない。

現在では、ある動物が利用できる酸素量が、その体のサイズを決定する最終的要因となり得ることがわかっている。高酸素条件下で巨大な節足動物が繁栄し、その後のデボン紀末期の酸素濃度の急落に伴い、大量絶滅が生じる。このデボン紀末期の大量絶滅は、地球上の生命が経験した最大級の絶滅である。

筆者らは、この大量絶滅以降、すなわち再び低酸素環境下におかれた生物は陸上進出を一旦休止し、3億7千万年前以降の高酸素時代に、地上への再進出を行ったという、二段階定着説を指示している。この二段階の間の期間、陸上にはほとんど生物は存在しなかったローマーの空白と呼ばれる期間がある。

六章では、石炭紀と呼ばれる酸素濃度が歴史上最大となった期間における、二段階目の陸上進出の時期についてかかれている。

石炭紀は氷河が形成された寒冷な時期でもある。陸上では裸子植物が繁栄し、巨大な昆虫、比較的大型な脊椎動物が出現する。海中を支配していたオウムガイは姿を消しアンモナイトに取って代わられている。サメのような軟骨魚類も存在し、魚類がとてつもない多様性を獲得している時代である。

酸素濃度のみではなく、気圧が高く、浮力を稼ぎやすい条件であったため、カモメサイズのトンボなど巨大な節足動物の存在を可能にした。

酸素濃度の増大をもたらしたのは、大量の有機物の埋没である。この時代、倒木等を分解する細菌のほとんどが、まだ出現しておらず、樹木の分解がなされなかった。このため酸素レベルの増大が生じたものと思われる。

七章にかかれているペルム紀は、古生代最後、過去最大レベルにまで増大した酸素濃度が、最低濃度近くまで急落する時期である。

諸大陸全ての陸地が合体し、超大陸パンゲアが完成した時代、地球上の生物の実に九割の絶滅が生じた。

酸素濃度の低下に伴い二酸化炭素濃度は急激に上昇し、世界は温暖な方向へ進んでいく。

この酸素濃度低下の主な原因は超大陸パンゲアの形成に伴う、沼地等の隆起により還元炭素が減少したこと、さらには二酸化炭素量の下落が植物バイオマスの下落を引き起こしたことである。

このペルム紀の大量絶滅は一度にではなく何度かにわけて生じていることが明らかになってきている。

酸素レベルの低下と温暖化に伴い、海中では硫化水素代謝細菌の増殖が始まる。ペルム後期には現在の2千倍もの硫化水素が大気中に放出された。この硫化水素濃度の上昇が大量絶滅の原因であるという説を筆者らは述べている。

この時期に生じた生物進化として内温性の進化があげられる。

内温性は体温が主に代謝熱で維持されている状態、すなわち恒温的な体温を持つ状態で、有酸素運動への適応として説明されることが多い。温度に依存しない活動を可能にする代わりに、安静状態でもエネルギーを消費し、代謝コストがかかる。

筆者らは、これを低酸素条件への適応、酸素吸入の効率化という側面から捉えている。なお、恐竜の内温性については未だ結論の出ていない議論である。

また、直立することにより呼吸負担の軽減についても述べられている。

直立姿勢になることで、運動時の肺の圧迫を無くし、とぎれることのない呼吸を可能にする、という事である。

八章、ついに三畳紀。いよいよ恐竜が登場する時代。

そもそも恐竜は骨格などから竜盤類と鳥盤類に二分される。このうち、恐竜時代当初、優位に立ったのは竜盤類である。

竜盤類は、骨格的に、現在の鳥類の呼吸システムと類似の呼吸システム(≒非常に効率のいい呼吸システム)を持っていたのではないかという推測が述べられている。

これに対して鳥盤類では、この鳥類類似の呼吸システムが見られないか、存在しても貧弱であったと、化石からは予想される。

この呼吸システムの差が、低酸素条件の続いてた三畳紀での繁栄、さらには白亜紀末期、隕石衝突後の世界での明暗を分ける一因となった。

そして、九章、ジュラ紀から白亜紀

徐々に酸素濃度の上がっていく地球環境。

高酸素時代になるに従い、呼吸システムで優位であった竜盤類の優位性が失われ、新しく現れた被子植物を食すのに適していた歯を持った、鳥盤類が頭角を現し始める。アンキロサウルスやステゴサウルスなど大型恐竜の栄えた時代である。

本書では、竜盤類より鳥盤類が優位であったような書き方であるが、ティラノサウルスは竜盤類。なので、鳥盤類のみが特別優位であったというわけでも無いのかもしれない。

そして白亜紀末期、繁栄を極めた恐竜、恐竜達の世界も、隕石の衝突により、終焉を迎える。

最近の研究では、隕石の衝突により、白亜紀末期に大量絶滅が生じたのは確定のようだ。

大量絶滅によって、恐竜のみが完全に滅びるのって納得できないと思っていた。その様な環境下ではほ乳類だっては虫類だって、完全に滅びていいはずだし、ほ乳類やは虫類が生き残った以上、恐竜だって生き残って良いはずである。

白亜紀以降、大量絶滅後の世界で、恐竜が鳥類として残存し、ほ乳類が恐竜の穴を埋めるように生存域を拡大してきた、というのならば、つまり、恐竜が世界の支配的動物じゃなくなっただけなら納得はできる。

骨格の形状とそこから予測される呼吸システム的には、現在の鳥類の祖先は竜盤類の方なんだろうか。と思ってwikiを見ていたら、それで正解の模様。

ちなみに現在、ヴェロキラプトル(竜盤類の小型恐竜)と始祖鳥の再現図を見比べると非常に似ている。鳥類と恐竜の中間化石が発見されたというニュースを最近どこかで読んだ気がするのだけど、ちょっと見つけられなかった。