【読書179】行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅
「行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅」(石田ゆうすけ/実業之日本社)
「せっかくだから世界一のものを見つけてやろう」
何が世界一かは、もちろん、ぼくが決めるのである。
ぼくが見て、世界一だと思ったら、それが世界一だ。(4ページ)
1995年7月、大手企業のサラリーマンを辞め、「自転車で世界一周をする」という目標を胸に、アラスカへ旅立ってから実に7年半。
バックパックスタイルで自転車を漕ぎ続け、実に9万5000kmをひとり走破した青年の手記。
とうとう、「安全地帯」から抜け出したのだ、と思った。(22ページ)
同じトルコへ入国したときに感じた。
そうは思っても、何の被害もなく、順調に進むたびの中で、最期には気が緩みまくっていたっけ。
筆者も同様、安全地帯の中に生きてきた感覚は抜けずにいたのだろう。
強盗、旅慣れた果ての無感動、友の死、マラリア、そして9・11。
エッセンスは重いのに、語り口は軽い。
この軽さを、私はバック・パッカー本には共通な軽さだと思う。
深く考えに沈んでいたら身動きが取れなくなる瞬間が、多く有るのだろう。
深く考えてしまったらそもそも初めの一歩を踏み出せない気がする。
だが、その浅はかさが時に命取りになる。それが友の死であり、強盗事件であろう。
安定した人生を取るかエキサイティングな人生を取るか…。
「後悔しないほう」という基準でぼくは考えた。(29ページ)
軽い憧れと同時に、自分には無理だなぁと思う。
恐怖心や肉体的、精神的な強さはもちろんだが、放浪したいという希望自体がないのだ。
筆者と同じように「後悔しないほう」を選んで、安全なほうをとる人生。
放浪願望はあっても放浪癖は無い。
他人の目を通してみる世界は広く、浅い。