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【読書245】パンデミック新時代

パンデミック新時代―人類の進化とウイルスの謎に迫る」(ネイサン・ウルフ/NHK出版/ひたちなか市立図書館書蔵)

 

パンデミック。病害の世界的な流行を指し、爆発的感染、とも訳される。

エボラ出血熱の感染者が過去最大となり、アフリカ以外の国で感染者が見つかるなど、ちょうど「パンデミック」はホットなキーワードとなっているようだ。

 

本書ではパンデミックをキーワードに、病害の発生、微生物がレパートリーの減少、HIVウィルスの危険性などに触れている。最後はデジタル疫学を用いた、発生予測の時代へ、と、筆者の論調は明るい。

 

気になったポイントを少しだけ。

 

⚪︎人類がチンパンジー/ボノボとの共通祖先から分かれたのが500-700万年前。それ以前に分離したと考えられているゴリラやオラウータンでは、肉食を示す証拠が驚くほど少なく、「狩り」は人間がチンパンジーやボノボを含む系統から枝分かれする少し前に出現した行動だと考えられる。(51-55ページ)

 

日常的な行動ではないものの、チンパンジーは人間を狩っていた。(66ページ)

チンパンジーの川から見れば人間の乳児も平素から狩りの対象としている小型のサルも変わらない。しかしこのことが、双方の微生物レパートリーにとって大きな意味を持つという。

 

人類の祖先が微生物レパートリーの多様性を失い、そのために遺伝子による防御力が低下した結果、人類の微生物浄化のあいだも微生物の大きな保管庫を維持していた類人猿の微生物に、人類は感染しやすくなったのだ。つまり、人類が種として変化しつづけるあいだ、ステージの別の場所ではウイルスの嵐を起こす準備が進んでいたのだった。(86ページ)

 

⚪︎微生物レパートリーの減少は、ボトルネック効果、調理、居住地の変更に伴う植生と気候の変化など様々な要因で成された。(第3章)

⚪︎集団の構成数が相当数減り、遺伝的多様性が失われることを「ボトルネック効果」というが、この時微生物レパートリーも一緒に失われる。これを「微生物浄化」と呼ぶ。(73-74ページ)

 

⚪︎ウィルスの存続に必要な個体数は25万以上(106ページ)

⚪︎HIVウィルスの危険性は、免疫不全そのものではなく、患者の体内で複数の病原微生物が混在し、組み換えや接合によって新らたな病原微生物が誕生することにある。

 

そういえば農学分野では「発生予察」という言葉がある。

天候予測や圃場観察から、病害発生を初期段階で予測し、適切な防除を行うことで最小限のコストで最大限の防除を目的とする。

これはインフルエンザの予防接種に近い。

もちろん未知の病害については対応が難しいだろうが、発生する病害虫が既知であれば、発生予察の精度が向上により、壊滅的な被害を受けることは減るだろう。

いや、未知の病害であっても、ごく初期に発生を感知できれば、感染拡大を防ぐことや、治療法確率までの時間を長く取ることができるかもしれない。

効果的な防除のためには「ごく初期」というのが大切である。

本書の発生予測でも病害発生のごく初期を「野生動物の接触」とし、ハンターらを調査している。

 

しかし、すでにメタデータの時代に来ているんだなぁ。

あれだけホットな話題であったヒトゲノム計画がすでに一昔前とは恐ろしい。

 

***

 

エボラ出血熱関連では、発生直後から感染経路特定といった流行の最先端を記した「レベル4 致死性ウイルス」が面白い。20年前の本なのかと愕然とする。

未知の病気が発生した場合に、いかにして感染拡大を食い止める、治療していくか。症状の重さ、感染、風評と絶望的としか言いようのない状況で、対策を講じることを使命とする人がいるのである。

 

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