心ゆくまで崖っぷちで読む本

中小企業診断士(登録予定)の読書ブログ

【読書435】マーブル騒動記

突如、念話能力を獲得し、人の脳裏に直接言葉を訴えかけるようになった牛🐃。 自宅のガレージに突如現れた牛(彩菊秀、又はウシ太郎)にテレビマン御手洗は、ウシ太郎の声を聞き、自分の担当する番組へ出演させる。 牛たちが主張したのは、人権ならぬ牛権、知的生命体牛の生きる権利、食われない権利だった。

牛をめぐるごたごたと、御手洗の家庭、職場での人間関係、トラブルが絡み合って進む現代日本を舞台にしたSF。

牛の中でも念話を習得したのは黒毛和牛🐃だけという設定で、他の牛たち(ホルスタイン🐄等)はそのまま牛なの面白い。

《いや、わが国の政府は、正攻法に対しては甚だ腰が重い。マスコミを通して問題を顕在化させたほうが近道だろう。特に頼りになるのは、やはりテレビだ。中でも、君の番組のような》

ウシ太郎はマスコミ、テレビの影響力を頼りに御手洗のもとを訪れるが、テレビ自体、そろそろアンティークな、作品が書かれた時代を明示するアイテムになるのだろうなぁ。(フィルムカメラやポケベルのように)

今の時代だったら人気YouTuberとかを訪れるんだろうか? テレビの娯楽討論番組よりはそっちの方が面白いものが見れそうである。

政府関係者や機動隊の失態がコミカルに描かれているが、警察も政府もそこまで無能ではないのでは?という点で少しげんなり。 最近よく話題にのぼる「マスメディアの偏向報道」の裏にある価値観、記事の対象者への敬意のなさ、選民思想を感じる。

知的生命体となった後に人間と交流して、暴動に参加しなかったウシは、意外と多くいたのではないだろうか。

作中でもクローンの説明があるが、クローンですら現実的には一卵性双生児にすぎない。 (クローン体や兄弟が多くいるにしても)遺伝的には多少の多様性がある集団に、同じ目的意識、知識が与えられていたとしても、異なる経験を異なる経路で処理すれば、やがて判断が分かれ、個が確立する。

終末に向かい暴走し、爆死する様子は、人間の起こすテロや反乱とあまり変わらない。ともすれば、ウシらの暴動が成功すれば、ウシ政権が樹立しただろうか。

知的生命体となったのが家畜でなく野生種だったら、また別の結末がありそうだ。

Kindleセールになると、気晴らしようの小説を中心に何冊か買っているんだけど、今回の戦利品は、当たりが多かった。

セールに出ている作品にもよってしまうけど…、楽しい読書が続くと、どんどん読めてよい。

増えているけど減っていない既読数と未読数。 f:id:dino-cross:20210203170821j:plain