心ゆくまで崖っぷちで読む本

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【読書414】銃と十字架

初めての遠藤周作作品。 実母がキリスト教系の学校を出た人で(おそらくキリスト教徒ではない)、実家に本作やキリスト教を題材とした小説が時々転がっている。 なんとなく敷居が高かったのだけど、勉強飽きて物語が読みたくなったので着手。

P+D BOOKS 銃と十字架

P+D BOOKS 銃と十字架

豊臣秀吉の治世に有馬の神学校に入学し、流転を繰り返す神学校の中で学び、迫害が激化する中マニラ、ゴア、イエルサレムを旅し、そしてついに辿り着いたローマで神父に叙品されたペドロ岐部。 少ない書簡や手紙からその軌跡を辿る歴史小説

主人公が出てくるまで延々と背景となる歴史の話が続く。うん、それで挫折して積んであったんだな。 Kindleの進捗だと25%くらいでようやく主人公の名前が出てきた。 そしてそこを超えても会話文はない。つらつらと出来事の羅列が続く。

ペドロ岐部が辿ったであろう道を行ったのは、彼だけではない。 他の記録や現在の状況から補完しても良さそうなのだけど、記録が残っていないことを理由に、特に補完されずに進む。

随所に作者自身の宗教感があって、ペドロ岐部らの行動にとても厳しい。

ペドロ岐部たちは日本に戻る生きかたを選ばなかった。はっきり言えば、彼等は同胞の苦しみに眼をつぶった。殉教の機会を遠くに追いやったのである。

このような内容が全体に散りばめられており、もっと後のページでは「日本を見捨てた」とまで書いている。 信徒とはいえ、人である。苦悩も葛藤もあったと想像する。

起点が迫害からの逃避であったとしても、言語面でも経済面でも後ろ盾がいない中、やり遂げるのは並大抵の労力ではないと思う。 そしてそれを「日本の信徒を見捨てた者」と断じるのは、あまりに冷たいのではないかと感じる。

一方で、拷問の最中、棄教した老神父らに対しては、その絶望を慮る。 強きには大いなる試練を、弱気には憐憫を、なのだろうか。解釈に困る。

己の宗教的解釈を強化するために過去の人物の行動をダシにした作文。それが私の本作の感想である。 そこには、実在した人物への敬意も、思想の作品としての昇華もない。

私は一体何を読んでいるのだろう。 読書中ずっと感じていたし、読了後もすっきりとしない気持ちが残った。

某所で本作と対になる作品と紹介されていたこちらの方が有名だろうか。

沈黙(新潮文庫)

沈黙(新潮文庫)

ちょっと時代が遡るけど、キリスト教徒となった女性の物語↓。 insolble.hatenablog.jp

遭難、放浪、キリスト教への入信などだと、おろしや国酔夢譚も面白かった。 insolble.hatenablog.jp