【読書442】地獄くらやみ花もなき
人ならざるものが見えるしょぼいニート遠野青児は迷い込んだ洋館で謎の美少年西條皓と黒目がちな少女紅子に出会う。
青児の眼には罪を犯した人が、その罪に呼応した妖怪として写る。
皓に唆されるまま、その眼をかわれて、助手として洋館で暮らし始める青児。 ワトソン役や便利な道具ポジションのはずなのに、うつけすぎて愛玩動物として皓の下で働く(?)青児。
そこはかとなく地獄少女感ある。
以下ネタバレ含む感想。
2話目のアイツはともかく、1話目の彼女のは地獄に落ちるほどの悪さのだろうか。
すっごい性格悪いし胸糞悪いのは間違いないんだけど、本人にもそれなりのトラウマがあり、大きな自己顕示欲があり、保身の気持ちがあり。それらは全てとても人間的なものだ。
結果誰かが病んで最終的に自死に至ったとして、その罪悪感からメンタルクリニックに通う彼女が、死ななければならないほど、地獄が適当と判断されるほど悪いのだろうか。
あのまま生き続けることがおそらくは彼女の罰だった。彼女は死んでしまったけど、その先の地獄は描かれていない。
就職氷河期の世代は自己責任の意識が強く、後輩にもそれを求める傾向にあるが、それは違うんだ、という論調を目にするようになった。 それ自体は良いことだし、自分自身も気をつけなければならないな、と思う。
一方でこの1話のようなエピソードに対して、それは自死した彼自身の責任では?という気持ちになる。
主因は彼女なのだろう。本人もそう思っている。 だけど、彼女と一緒に囃し立てた外野がいて、そこに囚われてしまった本人がいる。
彼の自死を、自己責任以外のなんだと思えば良いのだろう? 世代が違えば、別の見方をするのだろうか?
そしてやはり思うのである。 彼女の罪はそれほどなのか?と。