【読書374】夢みる葦笛
Kindleポイント還元セールで買い足した3冊の文芸書の中では1番の当たり。上田早夕里さん。
有機的なデストピア。どこか退廃的な雰囲気がただようサイエンスフィクション。 SFでは定番のメカや機構も、受肉した途端にグロテスクだ。なんとなく、伊藤計劃「ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)」を思い浮かべたり。 insolble.hatenablog.jp
終焉と再生を含む未来を予感させる終わり方のものが多く、人によってはいいとこで終わると感じる可能性もある。
「煙突の上にハイヒール (光文社文庫)」と続けて読んだので、例えば「1人乗りで飛行のためのもの」という同じ括りのモチーフであっても、こんなにも書き方が違うのって、読書の醍醐味だと思う。
◾️プテロス
身体を変え宇宙に飛び立ち、その場所場所の生き物を研究する宇宙生物学者が プロテスという飛行生物と歩む話。
得られるデータを人間の喜怒哀楽と関連付けないこと。これが宇宙生物学における基本概念だった。
人間を自分、宇宙生物学をコミュニケーションに置き換えても成立する。
◾️上海フランス租界祁斉路三二〇号
あらすじを説明しようとしたらネタバレになる。 引用もネタバレ風味か?と思ったけど、かなり好きなのでのせちゃう。
「何があっても、決して悲しまないと約束してくれるか」 「約束しても、僕はきっと泣いてしまいます」 「泣くのはいい。君がそうしてくれれば、私はむしろ安心できる」
◾️アステロイド•ツリーの彼方へ
脳とSRシステムの接続は体力を消耗させるので、回復剤の飲用は、分析業務を終えたあとの社員の義務だ。費用は会社持ち。自販機はID認証を通して、個人が一ヶ月に消費した本数をカウントしてくれる。接続回数よりもそれが多ければ、本人と上司に要確認の指示が出る。
なんとなく逆では?の違和感。 回復剤の使用が義務なら、消費のカウントが下回る時(飲んでない時)に確認指示が必要で、上回った分は給与から天引きでいい、と思うんだけど…製造業的発想かな。
Kindleだと、本としての厚みが見えにくいので、軽い感じで読み始めたのだけど、意外と厚い本だったように思う。 上田さんは結構好きな作家さんの1人なんだけど、多少のグロを覚悟しないといけないので、中々薦めにくいという位置づけだったんだけど…、骨太な感じの良いSF作家になったんだなぁ。
気付いたら↓の読了から7年も経っているし、感慨深い。 insolble.hatenablog.jp 上田さんの作品は、もう少し読んでみたいな。