【読書375】宝島
宝島。
勝手にトレジャーハントとか島を冒険するものだと思っていたんだけど、どちらかというと海賊退治の話だった。 当時の冒険または冒険に伴う危険は、人の蛮行によるものがリアリティがあったんだろうと想像する。バンバン殺し合うので、今時だとR15になるのかな。古典に属する小説は、味方も敵も、あっさり死んでいく命の平等さがいい。 誤解を恐れずにいうと、ナチュラルに差別意識満載なのもいい。 「蝿の王」が近い。 insolble.hatenablog.jp
とはいえ、解説に
しかし『宝島』の場合には、舞台となっている時代が一八世紀に設定されており、現地民との関係という、しばしばこの種の作品で差別的、あるいは白人優位のイデオロギーが露骨に出る部分では、そうした「他者」にあたる存在が海賊であるため、コロニアルな世界観が強く出ているとは言えない。
とある通り、本書の差別的表現は比較的少ない。 有色人種という表現はあったけど、「有色人種との結婚」のような書かれ方だったので、(差別意識でというより分類を記載しただけのような印象を持った(もちろん、翻訳によりニュアンスが変えられている可能性はある)。 むしろ、出身国による国民性の違いのような部分の方が、よほど差別的だ。
本文に移ると、当時の風習的な部分で興味深い点がちらほらある。
二階の自室で何度も自分で繕い、最後のころには、継ぎきればかりで元の生地がなくなってしまった。
悪名高い海賊が自分の服を繕っている様子を想像するとどこかおかしい。自分のことは自分でやるのが基本の世界なのだろう。映画などでは決して映像化されない裏話的なシーンだ。
食生活面でキーとなる飲料はラム酒だが、私は豚肉が気になる。 宝島への上陸後、ずっと豚肉を食べているが、ベーコンや燻製なのだろうか。生肉はそんなに日持ちしないと思うのだが。
本文もかなり楽しめたのだけど、それ以上に、英語学習者としては訳者あとがきがかなり興味深かった。 earringをどう訳すか、指抜きで封をするとはどういうことか。言語の翻訳には文化や風習の理解が欠かせないことを暗に示している。 いつか英語でも読みたいけれど、文章古くて難しいだろうなぁ。
もう少し爽やかな古典的冒険小説としては、「二年間の休暇」(十五少年漂流記)がお勧め。 insolble.hatenablog.jp